研究実績の概要 |
誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS法)、キレート固相抽出/ICP-MS法、還流型加熱酸分解/キレート固相抽出/ICP-MS法の3つの方法を使い分けることにより、多摩川河川水中の上流(清浄)域から河口域にかけて、下水処理放流水流入域も含めて全ての河川水試料について、少なくともレアメタル42元素を含む53元素の網羅的精密定量が可能になった。確立した方法を多摩川の中流域~下流域の河川水及び下水処理放流水のモニタリングに適用し、定量分析を行った。その結果、Luの0.16 ng L-1からNaの35 mg L-1の濃度範囲で53元素 (内、レアメタル42元素) をRSD 2~10%の分析精度で定量することができた。下水処理放流水流入域河川水、河口域河川水及び下水処理放流水中の多くの元素は、清浄域河川水よりも高濃度であった。下水処理放流水流入後の河川水試料では、Li, B, Ti, Cr, Mn, Co, Ni, Ge, Rb, Sr, Mo, In, Cs, Ba, Se, Gd, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Pt, Tl, Wの25元素が、清浄域河川水に比べて数倍~数十倍高い値を示し、特に、Mn, Co, Ni, Ge, Rb, Mo, Cs, Gd, Ptは、一桁以上の濃度上昇が観測された。これら25元素は、潜在的人為汚染である可能性が示唆された。 本研究において観測されたレアメタルの起源は、GdがMRI造影剤起源であること以外は不明だが、下水処理放流水ごとに異なる特徴がみられた。現状では多くの元素は極低濃度で存在するため水生生物や人体への影響は起こっていないと考えられるが、レアメタルのほとんどは重金属であり、高濃度に存在すると有害性が認めらる可能性があるため、水道水源になり得る河川の安全性を守るためにも、今後も定期的な調査による監視が必要である。
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