本研究では、気候モデルに用いる全球海氷海洋モデルに棚氷要素を組み込むことを目的とし、1度および0.25度の水平解像度を持つ海氷海洋モデルの整備・運用を実施した。最終年度には、1度解像度の全球棚氷海氷海洋モデルを用いて2500年間の数値積分実験(仮想トレーサー実験も含む)から得られた研究成果を取りまとめ、論文として出版することができた。高解像度モデル(0.25度)では、スピンアップ実験と経年変動実験を完了した。南大洋の海氷変動や棚氷融解の変動に焦点を当てた解析を進め、その成果を論文にまとめる段階にある。
研究期間五年間で、計15本の原著論文を出版し、そのうち6本は筆頭著者としての成果創出することができた。本研究課題は、棚氷要素を全球海氷海洋モデルに組み込むことに成功し、気候モデル内で南極沿岸域での氷床/棚氷-海洋相互作用を直接表現可能する道筋をつけた。このプロジェクトによって構築されたモデル基盤は、気候研究における氷床-海洋相互作用の研究への重要なステップとなる。また、南極棚氷の底面融解過程を観測結果と比較・検証するため、プロジェクト期間中に南氷洋領域モデルを用いた研究を実施した。これらの研究では、国内外の観測研究者との共同研究により、南極沿岸域(白瀬氷河周辺リュツォ・ホルム湾とトッテン棚氷周辺海域)における棚氷融解過程を明らかにし、その成果を高IFの学術誌に発表することができた。プロジェクト期間中には、本研究テーマに関連する研究は複数の学会(日本地球惑星科学連合、海洋学会など)において定期的に発表を行い、他の研究者との間で研究成果を共有した。
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