研究課題/領域番号 |
19K12302
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研究機関 | 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所) |
研究代表者 |
國分 優孝 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 研究員(移行) (10792533)
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研究分担者 |
秦 寛夫 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 研究員(移行) (00792532)
鶴丸 央 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 研究員(移行) (30776349)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物由来VOC(BVOC) / 自動車排出ガス / 都市大気汚染 / スモッグチャンバー / 光化学反応 / 都市緑化樹木 |
研究実績の概要 |
今年度予定のスモッグチャンバー実験を次の通り実施できた。 1)箱型テフロンバックの作製: 実験に先立ち、反応器である箱型テフロンバック(設計容積2000L)を作製した。当初、箱型テフロンバックは専門メーカーに製作を依頼する予定であったが、性能に関する懸念が解消できなかったため自作した。構成は日本自動車研究所のものを参考にした。 2)VOC濃度連続観測装置の構築: バック内の反応生成物の濃度を連続観測するための装置として、当初予定では光イオン化飛行時間型質量分析計(TOF-MS)の使用を想定していた。しかし、予備実験の段階において、現状のTOF-MSの検出感度では、本課題において有効なデータを得るには感度が不十分と判断された。そこで、TOF-MSの代替として現有のガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を改造し、バック内の反応生成物の濃度を連続観測できる装置を新たに構築した。具体的には、GC/MSのMS部(検出器)へ試料を直接かつ連続的に送ることができる機能を追加したことで、VOC濃度の連続観測を可能とする実験環境を整えることができた。 3)スモッグチャンバー実験の実施: 小型車1車種を使用し、シャシダイナモメータで過渡走行パターンであるJC08モード(冷気始動)での排出ガス(CO約633ppm、NO約5ppm、NMHC約205ppm)と、都内街路樹が放出する代表的なBVOCのイソプレンをテフロンバックに混合し、スモッグチャンバー内で紫外線を照射した。試料ガス中のVOC個別成分濃度、オゾン濃度及び粒子個数濃度を追跡した結果、オゾンが生成されながら、オゾンと微小粒子の前駆物質(自動車排ガス中のVOCやNOx等、添加したBVOCのイソプレン)が消費されていく様子を確認できた。特にオゾン、NO、NO2の濃度は光化学反応の典型的な時間変化を示しており、構築した実験系の有効性を実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、東京都環境科学研究所のスモッグチャンバーを用いて、自動車排出ガスと植物由来VOC(BVOC)の光化学反応実験を実施することができた。また、その反応生成物を追跡するための箱型テフロンバックとVOC連続観測装置についても、今回新たに準備できたことで、当初想定した通りの実験環境を整えることができた。新型コロナウイルスへの対応等でシャシダイナモメータ施設の利用が制限されているため、今年度実施できた実験は一回のみとなり、やや予定よりも遅れているものの、今後状況が改善すれば直ちに実験を再開し、2020年度中には十分な結果が出揃う見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、今年度も自動車排出ガスとBVOCの光化学反応実験を様々な条件(街路樹がある沿道の大気環境を模し、大型/小型の車種の違いや、BVOCの成分・濃度の違い等、色々な条件の組み合わせ)で繰り返し行う予定である。 また、その実験結果を数値的に表現できる化学反応モデルについて検討を行う。具体的には、まずは気相反応(オゾン、VOC、NOの生成消費等)に着目し、既存の0次元(つまり空間的変位を考慮しない)ボックスモデル(SAPRC07等)で実験結果を再現できるか検討する。次に、粒子の生成・成長等にも着目して、既存のモデル(AERO、VBS等)で実験結果の粒子径分布が再現可能か検討する。 さらに、本研究の最終目標である「東京23区の街路樹からのBVOC放出で生成される微粒子と光化学オゾンの総量」の算出を目指し、その入力データとする「東京23区の街路樹の総BVOC放出量」と「東京23区の車種別自動車排出ガス総量」の整備を進める。 得られた結果は順次外部発表を行う。
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