研究課題/領域番号 |
19K12302
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研究機関 | 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所) |
研究代表者 |
國分 優孝 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 研究員(移行) (10792533)
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研究分担者 |
秦 寛夫 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 研究員(移行) (00792532)
鶴丸 央 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 研究員(移行) (30776349)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物由来VOC(BVOC) / 自動車排出ガス / 都市大気汚染 / スモッグチャンバー / 光化学反応 |
研究実績の概要 |
(1)都内区部の街路樹由来BVOCと自動車由来NOxの放出量比率 東京都環境科学研究所で保有する都内区部の「樹種別街路樹葉面積分布データ」と「都内優占街路樹種の単位葉面積BVOC放出量データ」を用いて、新たに「都内区部の街路樹BVOC放出量インベントリ」を3次メッシュ(1km×1km地上解像度)で構築した。そして、この「街路樹BVOC放出量インベントリ」と、東京都環境科学研究所が保有する「車種別自動車NOx排出量インベントリ」との領域交差を3次メッシュで行い、各メッシュにおける街路樹由来BVOCと自動車由来NOxの放出量比率を通年で時刻別に算定した。これにより、都内区部の沿道大気に添加されている街路樹由来BVOCと自動車排出ガスの量的な比率が明らかになった。 (2)スモッグチャンバー実験 昨年度に構築したスモッグチャンバー装置を用いて、小型車・大型車・ハイブリット車を含む6車種の排気とBVOCとの反応実験を、複数の組み合わせ条件で計17回を行った。初期濃度条件は、上記(1)で算定した都内区部全域の街路樹と自動車のBVOC/NOx総放出量モル比率(イソプレン/NOx=0.2、αピネン/NOx=0.3)を再現するように、チャンバー内のNOx初期濃度に基づいてBVOC(イソプレン、αピネン)の添加量を調整した。それぞれの実験結果を比較し、車種の違いや、BVOCの成分・濃度の違いによるオゾン生成量の変化を明らかにした。 (3)化学反応モデルによる検証 既存の化学反応モデルに、微粒子による気相(オゾンとNOx)の取り込み反応を追加する改良を施した結果、実験結果のオゾン生成量がモデルで再現可能であることを確認した。自動車排出ガスとBVOCの共存によるオゾン生成量の予測が可能となったことで、上記(1)のインベントリデータを活用した都内区部のオゾン生成量推計を実現する環境を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「都内区部の街路樹由来BVOC放出量インベントリ」を整備し、街路樹由来BVOCと自動車由来NOxの3次メッシュの時刻別年間放出量比率を計画通り算定した。また、都内区部の沿道大気において想定される街路樹由来BVOCと自動車由来NOxの混合比率下でのスモッグチャンバー実験を繰り返し行った結果、東京都心部の沿道大気においては、街路樹から放出される微量のBVOCでも、大気汚染物質(オゾン、微粒子)の生成が起こりうるということが実験的に裏付けられた。自動車と街路樹に起因する大気汚染物質生成量のデータ収集が計画通り完了した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標である「自動車と街路樹に起因する都内区部沿道の大気汚染物質生成量の総量推計」を行う。2021年度では、WRF気象モデルを用いて都内区部の3次メッシュ気象データ(温度・日射量等)を準備する。そして、その気象データと、今年度整備した「街路樹由来BVOCと自動車由来NOxの時刻別の3次メッシュ放出量比率データ」を、本研究で構築中の化学反応モデルに入力データとして与え、オゾンと微粒子の生成量を計算する。これにより、都内区部に現存する街路樹からのBVOC放出により生成されるオゾンと微粒子の総量推計を行う。
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