研究課題
本研究は,近年入手が可能となった人工衛星搭載L-バンドマイクロ波センサーによる海面塩分データを用いて,海面塩分場に出現する中規模渦活動を検出し,全球海洋において定量的に評価することで,中規模渦が背景塩分場に与える影響についての理解を深めることを目的としている。この目的を達成するために,(1)中規模による塩分輸送の評価,(2)塩分を変化させるその他の要素との比較,(3)この輸送がバリアレイヤー(海洋から大気への熱放出を抑制する層のこと)の形成に与える影響の評価,という3項目を設定している。令和3年度では,主に項目(2)を実施した。降水・蒸発,水平輸送,エントレインメント(下層からの海水取り込み)を考慮した塩分収支解析の結果,海面塩分変動を説明し得る項として,低緯度では塩分フロントを横切る海流,特に風による表層流,中緯度の海盆東部および西部では大気海洋間の淡水フラックス,残りの海域ではエントレイメントが卓越することが示された。衛星海面塩分データの他に,全球格子観測データも解析したところ,概ね同様の分布が得られた。両者を比較すると,衛星データの方が分布がややノイジーであったが,最小限の空間平滑化しか行っていない衛星データは,中規模渦を解像できる強みがある。中規模渦による塩分輸送と,その他の要素を定量的に比較したところ,海域にもよるが,前者は無視できない影響を持つことが示された。研究期間全体を通じて,目的で設定した項目(1)~(3)の内,(1)と(2)はおおむね達成できたが,(3)は達成できなかった。
受賞対象論文Abe,H., N. Ebuchi, H. Ueno, H. Ishiyama, and Y. Matsumura, 2019: Aquarius reveals eddy stirring after a heavy precipitation event in the subtropical North Pacific. J. Oceanogr., 75, 37-50.
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Progress in Oceanography
巻: 198 ページ: 102675~102675
10.1016/j.pocean.2021.102675
巻: 196 ページ: 102595~102595
10.1016/j.pocean.2021.102595
https://www2.fish.hokudai.ac.jp/infomation/11019/