海洋における鉄の循環や植物プランクトンによる鉄利用の機構の理解を目的として、本研究は鉄の形態の中でも生物利用能の高いFe(II)に着目して「海洋環境の違いがFe(II)の挙動を制御し、植物プランクトン現存量にも影響を与えている」という仮説を検証した。その結果、海洋では日中はFe(II)が光化学反応を経て生成し、北太平洋では光照射によるFe(II)の生成・消失速度が測点間で変化した。この原因には、水温やpHに加え、天然海水中の有機配位子の光化学反応性の相違が挙げられた。また、Fe(II)生成速度は現場の生物生産性とも関係しており、鉄の生物利用能は一次生産の仕組みに影響を与える可能性が示された。
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