研究課題/領域番号 |
19K12312
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
眞木 貴史 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 室長 (50514973)
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研究分担者 |
出牛 真 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (00354499)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炭素循環 / 逆解析 / 衛星観測 / バイアス補正 / 化学過程 |
研究実績の概要 |
これまでに開発を行ってきた衛星観測データのバイアス補正法のうち、月毎の独立解析値と衛星観測データの差について期間平均をとったものを衛星観測のバイアスと見なす方法を用いた二酸化炭素収支の解析を行った。先行研究では、衛星観測データを現地観測データに追加して解析を行うと、主に衛星観測データのバイアスにより地域毎の二酸化炭素収支が大きくシフトする結果が得られており、衛星観測データ導入時の問題点となっていた。今回採用したバイアス補正法により衛星観測データ導入に起因する領域二酸化炭素収支のシフトはかなり小さくなり、衛星観測データを実用的に二酸化炭素収支解析に適用することが可能となった。加えて、衛星観測データを導入した方が現地観測のみの解析結果よりも独立した観測データ(航空機)を用いた検証でより誤差が小さくなることも示すことができた。これにより、衛星観測データを炭素収支解析に導入する目処を付けることができた。このシステムは気象庁が毎年公表している二酸化炭素分布情報や海洋二酸化炭素収支解析にも利用される見込である。成果は2021年秋に開催予定であった第11回二酸化炭素国際会議において発表及び専門家との議論を行う予定であったが、同会議がCovid-19の影響により延期されているため、論文取り纏め作業が一部遅れている。現在その取り纏めの論文執筆作業を進めている。 メタン輸送モデルの構築に関しては、国際的な相互比較等で利用予定のOHラジカル生成に重要なモデルの対流圏オゾン再現性に関する検証を進めると共に、気象研究所が開発を進めている次期地球システムモデル(MRI-ESM3)にパッシブトレーサー機能が導入されたためにここに鉛直輸送過程、メタンのOHラジカルによる破壊過程等を取り込むこととして基本設計を行った。加えて、他機関のメタン輸送モデルに関する情報収集を進め、準備を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の大きなテーマは二酸化炭素逆解析への衛星観測の導入とメタン輸送モデルの開発である。 前者に関しては、衛星観測データを導入する上で最大の問題であった衛星観測データのバイアス補正法に関して独立解析を用いて評価することで、既存の解析の問題点を克服しつつ、独立観測値との検証においても優位な結果を得ることができた。論文の取り纏め作業は予定していた国際学会の延期により若干送れている。 後者に関しては、OHラジカルの生成にとって重要な対流圏オゾンのモデルでの再現性に関する検証を進めつつメタン輸送モデル開発基本設計等が進んでおり、延期した研究計画期間内に達成が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
二酸化炭素逆解析に関しては、衛星観測データのバイアスを補正しつつ逆解析を行う解析システムは構築でき、二酸化炭素収支解析結果や独立観測データを用いた検証においても有効な結果を得ることができたので論文として取り纏め作業をおこなう。 メタン輸送モデルに関しては、これまでの検証結果等を踏まえつつ当所で開発中の新しい地球システムモデル(MRI-ESM3)に組み込む作業を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年秋にブラジルで開催が予定されていた第11回二酸化炭素国際会議がCovid-19の影響により延期となったため、外国旅費及び学会参加費が未使用となった。これに伴い論文の取り纏め作業が次年度に持ち越しとなり支出を見込んでいた英文添削料と論文掲載料も未使用となった。 次年度はこれら今年度分の未使用だった項目に加えて、データ保存用のストレージ等を購入する予定である。
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