これまでに研究開発を実施してきた衛星観測データのバイアス補正手法の取り纏めを実施した。独立した現地観測(地上、船舶、航空機)を用いた逆解析を行い、これと衛星観測データとの差をバイアスと見なして、固定値、全期間の平均値、月平均値で補正する手法を用い、補正後の衛星観測データを改めて現地観測と組み合わることによる逆解析を実施した。独立観測データ(商用航空機観測)による評価検証の結果、これらの補正を行うことにより特に対流圏中層、上層において衛星観測データを使わない場合よりも独立観測データに近い結果が得られた。一部南半球等で殆どインパクトが得られなかったが、これは現地観測による逆解析自体の精度が十分ではなかったためと推測できる。このバイアス補正により、先行研究では衛星観測データを逆解析等に導入すると解析された領域CO2収支が大きく変化するなどの結果が得られていたが、この変化が多くの領域で減少した。これらの結果により、新たに開発した衛星観測データバイアス補正法の有効性を確認することができ、この成果を取り纏めて論文として発表することができた。 メタンの輸送モデルに関しては、当所で開発中の地球システムモデルに組み込まれたパッシブトレーサー機能を活用して、鉛直輸送(積雲、乱流)過程を組み込み、地球システムモデルの化学輸送サブモデルよりOHラジカル分布の抽出やメタンの先験情報フラックスの整備をほぼ完了することができた。これにより、メタン輸送モデル構築の準備も概ね整ったといえる。
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