研究課題/領域番号 |
19K12313
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
渡邊 圭司 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 専門研究員 (50575230)
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研究分担者 |
須田 亙 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 副チームリーダー (20590847)
石井 裕一 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 主任研究員 (80551027)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 淡水圏 / 浮遊細菌 / ポリリン酸キナーゼ / ゲノム |
研究実績の概要 |
淡水圏からこれまでに分離された17菌株(フラボバクテリア門およびベータプロテオバクテリア綱に属する細菌株)の浮遊細菌の全ゲノム解析を行い、これまでゲノム情報が公開されていないグループに属する浮遊細菌が、ゲノム配列上に細胞内のポリリン酸の蓄積に関与するポリリン酸キナーゼ遺伝子を有しているか調べた。Flavo-A3トライブに属し新種と推定されるフラボバクテリウム属の細菌2菌株、新種以上で新規性が認められるbetIII-A1トライブ(別称GKS98クラスター)に属する 11菌株および新種以上で新規性が認められるJanbトライブ(別称LiUU-5-340クラスター)に属する4菌株について、次世代シーケンサーによる全ゲノム解析を行った。その結果、2菌株を除き1つの環状ゲノムが形成された。Flavo-A3トライブに属する2菌株については、ゲノムサイズが2.26~2.40 Mbp、DNA G+C含量が34.4~35.1 mol%であること、betIII-A1トライブに属する11菌株については、ゲノムサイズが2.47~3.16 Mbp、DNA G+C含量が50.9~55.2 mol%であることおよびJanbトライブに属する4菌株については、ゲノムサイズが3.00~3.73 Mbp、DNA G+C含量が53.9~62.2 mol%であることが明らかとなった。また、ゲノム解析した17菌株の全てが、ゲノム配列上にポリリン酸キナーゼ様の遺伝子配列を有しており、そのうち5菌株については、ppk1およびppk2の2つのポリリン酸キナーゼ遺伝子様の配列を有していた。これらの結果より、ポリリン酸キナーゼ様の遺伝子が、淡水圏に生息する浮遊細菌のゲノム配列上に広く保持されていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響で研究分担者の所属する研究施設が長期間閉鎖となっていため、ゲノム解析に遅れが生じたが、これまでのところ、おおむね研究計画に沿って順調に研究が進んでいる。昨年は、世界中の河川に広く分布していることが明らかとなっているが、これまで未培養系統群として分子系統位置および生理学的特徴が不明確であったIRD18C08クラスターに属する浮遊細菌について、先行研究で得られた純粋分離株を用いてそれらの解析を進めた。このグループに属する浮遊細菌は、ポリリン酸キナーゼ様の遺伝子(ppk1とppk2)をゲノム上に有しており、またゲノム配列を基にした系統解析や生理学的特徴等を近縁の基準株と比較したところ新規性が見られたため、誌上発表を経て新科、新属および新種の提案が受理されるに至った。このように、研究成果は着実に得られている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、河川の上流域から河口・沿岸域にかけて浮遊細菌の菌叢解析および純粋分離株について全ゲノム解析を行ってきた。今後は、純粋分離株について細胞当りのリン蓄積量の解析およびCARD-FISH法による現存量解析を行うことで、それら浮遊細菌を介した河川から河口・沿岸域へのリン供給量の推定とそれらが河口・沿岸域の生態系にどのような影響を与えるのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で研究分担者の所属する研究施設が長期間閉鎖となっていためゲノム解析に遅れが生じた。このゲノム解析のデータを使用して分子系統解析を進め、その結果を基に純粋分離株と近縁種との生理学的特性の比較解析を行う予定であったが、年度内に間に合わなかったため、これらの分析に使用する予定であった消耗品費が次年度使用額として生じた。
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