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2019 年度 実施状況報告書

雲粒子ゾンデCPSによる混合相雲の消散過程の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K12314
研究機関防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群)

研究代表者

岩崎 杉紀  防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 准教授 (30535274)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード絹雲 / 北極 / 混合相雲 / 過冷却の水雲
研究実績の概要

CALIOPとCloudSatの両衛星センサのデータ解析より、LSCは北極の冬季から春季にかけて現れやすい(北極に現れる雲の最大2割はLSC)、LSCが過冷却の水雲(SC)の上から落下しSCを消していることが分かった。これらの成果を国内学会で1回発表し、国際学術雑誌に1本発表行った(Iwasaki et al., 2019)。また、雲粒子センサー搭載ゾンデ(CPS)観測のテスト観測を行った(「現在までの進捗状況」参照)。
衛星搭載ライダCALIOPと衛星搭載雲レーダCloudSatは、どちらも直下方向を観測し、同じ軌道を15秒離れて移動しているので、同時観測と言ってよい。両衛星を用い、CALIOPでは観測できない・しにくいがCloudSatでは有意に観測できる雲の出現頻度や他の雲との関係を研究する。本報告書では、この雲のことをLarge-Sparse particle clouds (LSC)と呼ぶ。なお、通常の雲はLSCとは逆でCALIOPのほうがよりよく雲を観測できる。
CALIOPでさえ観測できない雲なので、ひまわり8号といった受動型センサでは観測することはできない。CloudSat単体でLSCが観測できてもその粒径分布といった基本的な量を推定することが出来ない。ライダと雲レーダの地上観測は以前から世界各地で行われてきたので、LSCの研究は以前から知られていても良さそうである。しかし、LSCと思われる報告が先行研究では2例しか見当たらない。この理由は、Iwasaki et al. (2019)で報告されたように、LSCは北極で発生しやすいのだが、北極では高度1km付近に過冷却の水雲か混合相雲(水滴と氷粒が混在する雲)が多頻度で出現するため、ライダでその上にあるLSCを見つけることが難しいためと考えられる。このため、LSCは今まで気が付かれることがなかった雲である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2020年3月9日から14日まで、北海道の湧別町でCPSゾンデ観測を行った。ただし、この主目的は、湧別町の観測は初めてであったため、観測が問題なく行えるかの確認であった。また、今まではゾンデ観測にヘリウムガスを用いていたが、ヘリウムガスが世界的な品薄で手に入れにくいため、水素ガスボンベを初めて観測に用いた。静電気や水素の検知器、静電気対策用品も初めて用いた。風船に水素ガスを詰める場合、どのようにしても必ず水素ガスが漏れる事が分かった。特に風船の口管から風船下部は水素が溜まりやすく、水素が爆発をする濃度4%近くなったが、風船近傍以外はそこまで高くなることはなかった。このため、水素ガスの漏れを防ぐことも大切であるが、静電気を起こさないことがより大切であることが分かった。静電靴を履いていても静電気は発生するため、身につける全てのものに静電気が起きない工夫が必要である。
観測場の周囲は3階建程度の高さの建物や林に囲まれていたが、電波は観測限界まで受信する事ができた。観測場の電源から50mの延長コードを車に引き、車内にゾンデ受信機などを設置、そこから15mのアンテナケーブルを伸ばすことで電波の遮蔽を最小限に抑えた。
本来はライダを用いるはずであったが準備が間に合わなかったため、代わりにシーロメータをライダ設置場所に設置し、CPSと同時観測を行った。
観測場を管理されている方々、湧別町役場の方々(観測場の近隣住民や漁協関係者への周知を行って頂いた)、紋別市が流氷観測用に運用している気象レーダを管理されている方々(提供いただいたデータを解析する予定)、すべての方々が大変協力的であったため、円滑にテスト観測を終えることができた。

今後の研究の推進方策

2020年度の冬期に同観測場で2週間程度の本観測を行う。これに向け、2020年3月に行ったテスト観測のデータの解析と問題点を洗い出す。また、2020年3月の観測には準備が間に合わなかったライダの野外観測の準備にも取り組む。ライダはすでに納入済みである。通常、ライダはコンテナの中に設置するが、これだと輸送が大規模になるので、ライダをそのまま野外に設置する予定である。このため、ライダの雨対策やレーザの冷却水の凍結対策など必須となってくる。ライダの「雨具」に用いる予定の高透過率のガラスはすでに手元にある。
また、スバールバル島のニーオルスンに設置してあるライダと雲レーダのデータ解析も行う。地上の同時観測データの解析では、それらの3年分のクイックルックによって高度1km付近の過冷却の水雲と混合相雲(過冷却の水雲から降雪がある雲)によって、(1)ライダの信号がその上空に達している事例は少なく、(2)雲レーダとライダがその上空の雲を同時に捉えている事例はさらに少ない、ことは確認できている。しかし、この数少ない観測データのうち、通常の雲とは異なり、弱い信号強度なのに落下速度が大きい信号も見つかっている。ライダの校正を行い、ゾンデデータやCALIOP・CloudSatのデータと比較をしながらこの事例解析をしていきたい。

次年度使用額が生じた理由

論文代などを別予算で支出したため、使用額が変更になった。差額は雲粒子ゾンデCPSの購入経費に充てる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Large-and-Sparse-particle Clouds (LSC): Clouds which are subvisible for space-borne lidar and observable for space-borne cloud radar2019

    • 著者名/発表者名
      Iwasaki Suginori、Seguchi Takafumi、Okamoto Hajime、Sato Kaori、Katagiri Shuichiro、Fujiwara Masatomo、Shibata Takashi、Tsuboki Kazuhisa、Ono Takashi、Sugidachi Takuji
    • 雑誌名

      Polar Science

      巻: 21 ページ: 117~123

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.polar.2019.05.003

  • [学会発表] CPSゾンデ・ライダの同時観測による粒形大きく個数密度少ない氷晶雲の生成過程の研究2019

    • 著者名/発表者名
      2.岩崎杉紀、藤原正智、杉立卓治、柴田隆、内野修、宇賀神惇、森野勇、岡本創、坪木和久、小野貴司
    • 学会等名
      日本気象学会春季大会

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公開日: 2021-01-27  

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