ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair; NER)はゲノム安定性の維持に重要な役割を果たしているが、休止期ではその後期過程が完了しない場合がある。その残存したNERの中間体はプロセッシングを受け、新たに二次的なDNA損傷を生成する。本研究ではNER反応中間体のプロセッシングの生物学的意義の解明を目的とし、以下のような成果を得た。 1.二次的DNA損傷のうちDSB(DNA double-strand break)の修復系に着目した。G1期と同様にNHEJシステムの関与が予想されたので、初期段階で働くDNA-PKCSの活性化と局在性について解析し、紫外線損傷部位に集積することを見出した。そしてNHEJの必須因子であるKu70とXRCC4の欠損が及ぼす影響について検討したところ、紫外線照射後の細胞死が顕著に増加し、NER依存的に生じるDSBに対してNHEJが主に機能することを示した。 2.HPRTの活性を指標にした突然変異検出系により解析を行い、正常細胞で観察される紫外線誘発突然変異の上昇が、Exo1のノックアウト細胞では全く観察されないことを見出した。また染色体異常についても検討したところ、NHEJ因子のノックダウンによる顕著な増加が観察された。したがって、二次的DNA損傷はゲノム不安定性を誘発する要因となることがわかった。 3.NER依存的なDSBの生成機構について、ATMシグナリング経路の活性化を指標に同定したヌクレアーゼについて検討を行った。ノックダウン細胞そしてノックアウト細胞を作製したところ、DSBに対する応答反応が低下し、活性化型のDNA-PKcsのDNA損傷部位への集積もほとんど見られなくなった。また一方で、このDSBの生成には複数のヌクレアーゼが関与していることも明らかにした。
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