研究実績の概要 |
細胞にとって最大の脅威である酸化は活性酸素 (ROS) によって起こされる。電離放射線は細胞成分に直接損傷を与える作用と, 大量に生成するROSの反応によって細胞に強い酸化反応を引き起こす作用がある。これら酸化反応は細胞死、 突然変異、がん化、 早期老化、発生異常や神経疾患などの様々な病態が起こる原因となる。 本年度は(1) 酸化DNA修復酵素KsgAのDNA結合機構の解明を行い、in vivoでの実験において、 N末端欠損とC末端欠損のplasmidをそれぞれ大腸菌mutMmutYksgA欠損株に導入し、突然変異頻度の抑制効果をさらに確認した。さらに、C末端タンパク質立体構造をUCSF Chimera法で解析してより精度を上げ、大腸菌MutM、Neiとの構造類似性を数字レベルで行った。酸化DNA修復酵素KsgAのDNA結合機構の解明を精度と質を上げ、論文作成・投稿し、国際英文誌に公表された。 (2) 昨年度まで線虫C.elegans DNA修復酵素欠損と胚発生時期に受けた損傷、その後の寿命短縮への影響を調べたが、本年度はその実験方法を更に検討・確立し、遺伝子欠損は胚発生時期に受けたDNA損傷がその後の成長と寿命維持に重要な役割を果たしていることを、また、酸化ストレス応答についても確認・検討し、DNA修復二重欠損株を用いての検討を更に確認の実験を行い、その成果は日本分子生物学会で発表した。(3)昨年度ヒト細胞における酸化タンパク質を還元する酵素GLRX1を過剰発現する細胞株の樹立の実験を行ったが、本年度は得られた細胞株の候補を、酸化ストレス条件下の細胞内活性酸素種の産生やDNA損傷応答タンパク質の発現について調べた。得られた成果の一部は国際ATW学会で発表した。
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