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2020 年度 実施状況報告書

放射線とがんとをつなぐ老化細胞の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K12322
研究機関広島大学

研究代表者

河合 秀彦  広島大学, 医系科学研究科(薬), 准教授 (30379846)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード放射線被曝 / がん / 幹細胞 / 細胞老化
研究実績の概要

放射線発がんの標的モデル細胞として用いたiPS細胞の持続照射と急照射に対する細胞応答性について、ハイコンテント・ハイスループットイメージング装置を用いて解析を行った。その結果、iPS細胞では、異なる照射条件に対して分化細胞よりも顕著な放射線に対する細胞の応答性と感受性の違いがあることが明らかとなった。分化した細胞の多くのエンドポイントは細胞死と細胞老化であり、細胞周期チェックポイントはG1/S期に集中していたのに対して、iPS細胞の持続放射線に対するエンドポイントは細胞死であり、細胞死は明確に2種類存在することが明らかとなった。この時に細胞死のチェックポイントは、M期に存在していると考えられた。細胞周期チェックポイントと細胞死の細胞の種類に依存した違いは、幹細胞には持続照射のような持続的に生じるDNA損傷やがん化や悪性化の過程で特異的な応答機構が存在している可能性を示唆するものである。
また、異なる線量率での放射線照射によって誘発される変異についても、iPS細胞に特長的な傾向が認められた。自然誘発あるいは低線量の放射線被曝などによって低頻度に生じる変異を解析することを目的として、大腸菌とiPS細胞で複製されるシャトルベクターとNGSを用いた変異検出がハイスループットにできる実験系を確立し、それらを用いて変異頻度と変異スペクトラムの変化を解析を行った。その結果、iPS細胞では持続照射線量特異的に変異が増加することが明らかとなった。変異スペクトルについては解析途中ではあるものの、がん細胞とiPS細胞との間では変異誘発機構が異なる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初想定していた以上に、iPS細胞においては、その他の分化細胞とは異なり、持続照射と急照射に対する応答性に顕著な違いが明らかとなった。そこで、特に幹細胞細胞特異的な持続照射に対する応答性して着目して解析を進めることとした。放射線被曝によって生じる発がんのメカニズムを明らかにする概ね順調に進んでいると考える。また、NGSを用いた誘発変異の解析法を開発したことによって、低頻度で生じる変異スペクトルを想定以上に効率よく解析できるようになった。

今後の研究の推進方策

計画通りに進め、より、幹細胞細胞特異的な持続照射に対する応答性して着目し、解析を進める。また、NGSを用いた誘発変異の解析法によって変異同定を進めることによって、幹細胞に導入される変異とその誘発機構と発がんおよび悪性化の機構を明らかにすることを試みる。

次年度使用額が生じた理由

NGSの受託解析費用の同額での解析データ量の増加によって、解析費用が下がった一方で解析データ量の増加が可能であるため、解析サンプルを来年度増加することによって、より多くのデータで解析を行うこととする。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Single-stranded DNA versus tailed duplex in sequence conversion of lacZα DNA2020

    • 著者名/発表者名
      Kawai Hidehiko、Sato Kento、Shirahama Wataru、Suzuki Tetsuya、Kamiya Hiroyuki
    • 雑誌名

      Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids

      巻: 39 ページ: 1245~1250

    • DOI

      10.1080/15257770.2020.1790596

    • 査読あり
  • [雑誌論文] APC/CCdh1 is required for the termination of chromosomal passenger complex activity upon mitotic exit2020

    • 著者名/発表者名
      Tsunematsu Takaaki、Arakaki Rieko、Kawai Hidehiko、Ruppert Jan、Tsuneyama Koichi、Ishimaru Naozumi、Earnshaw William C.、Pagano Michele、Kudo Yasusei
    • 雑誌名

      Journal of Cell Science

      巻: 133 ページ: 251314

    • DOI

      10.1242/jcs.251314

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 次世代シークエンサーを用いたsupF遺伝子変異解析系の開発2021

    • 著者名/発表者名
      増田翔吾、鈴木哲矢、河合秀彦、紙谷 浩之
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] 変異シグネチャー解析による8-hydroxyguanineにより誘発される遠隔作用変異誘発機構の解明2021

    • 著者名/発表者名
      福島瑠里子、鈴木哲矢、河合秀彦、紙谷 浩之
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] 人工ヌクレアーゼを用いない遺伝子編集ツールTailed Duplexにおける配列依存性の検討2021

    • 著者名/発表者名
      上坪諒太郎、佐藤健斗、矢間顕太郎、河合秀彦、紙谷 浩之
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] 人工ヌクレアーゼを用いない遺伝子編集法の開発:ミスマッチ塩基数の影響2020

    • 著者名/発表者名
      佐藤健斗、矢間顕太郎、河合秀彦、紙谷浩之
    • 学会等名
      日本環境変異原学会第49回大会(沼津)
  • [学会発表] 8-dihydroguanine による遠隔作用変異誘発への OGG1 と WRN のダブル ノックダウンの影響の解析2020

    • 著者名/発表者名
      財間悠大、鈴木哲矢、河合秀彦、紙谷浩之
    • 学会等名
      日本環境変異原学会第49回大会(沼津)

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公開日: 2021-12-27  

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