電離放射線に被曝したマウスの神経幹・前駆細胞(NSPC)における最も深刻なDNA損傷であるDNA二本鎖切断(DSB)の数を明らかにするために、我々はこれまでに分離した脳組織を培養してin vitroでニューロスフェアを形成してきた。しかし、ニューロスフェアに出現したDSBが、生体内の脳組織のDSBを反映しているかどうかは不明であった。そこで本研究では、マウス胎生14.5日齢脳組織の凍結切片を用いて、X線照射によって生じたDSBとアポトーシス細胞の数を直接測定した。妊娠ICRマウスの14日目の胎児に2GyのX線を照射し、線条体組織切片中のDSBとアポトーシス細胞の数を免疫組織化学的に染色して測定した。beta III-tubulinが発現している部位を神経細胞が豊富な部位とし、beta III-tubulinが発現していない側脳室に隣接する部位を神経細胞が豊富な部位とした。DSBとアポトーシスは、それぞれリン酸化された53BP1の病巣と、切断されたカスパーゼ3の発現によって検出した。照射後1時間から24時間のNSPCsのDSB修復動態は神経細胞と同様で、時間の経過とともに病巣の数が減少した。この結果はニューロスフェアを用いた培養系の実験と一致した。NSPCsのアポトーシスは、神経細胞よりも早く現れ、照射後3時間から6時間でプラトーに達した。NSPCにおけるアポトーシスの出現が神経細胞よりも早かったのは、照射後3時間から24時間の間にNSPC領域の幅が時間依存的に減少したことと関係があると考えられる。
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