研究課題/領域番号 |
19K12327
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
細貝 良行 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (90451525)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 被ばく線量測定 / リアルタイム / 人工ルビー / MPPC / 放射線治療 / 光電子増倍管 / SiPM |
研究実績の概要 |
本研究の目的である同時多数点での放射線被ばく線量測定を実施するために、当初の予定であった光電子増倍管を使用したシステムではなく、半導体検出器(MPPC)を使用し検証を行った。前年度の課題としていた、光ファイバーとの接地面の距離や精度などの問題については、県内の精密金属加工を行っている企業に製作依頼を行い、何度か試作品を作成した後、クリアランスの確保ができた。現在、MPPCモジュールと人工ルビーを設置した光ファイバーを使用して基礎データ収集を行っている。 MPPCモジュールは半導体であるため、暗電流の問題があり、光電子増倍管と比較した場合、初期設定が難しくX線線量が少ない場合に測定値が安定しない。しかしながら、検出器の大きさが非常に小さいにもかかわらず、1つの検出器内に16チャンネルを保持しており、光ファイバーの接続を適切に行う事で一度に16箇所のデータ収集の可能性があり、使用に際してはUSBケーブル1本で使用可能な点などを考慮すると、我々が目標としているシステムには理想的な検出器であると考えており、適切なデータを収集するための初期設定や方法等の検討を実施している。 一方で、これまでのデータ収集の結果から、センサーとして使用している人工ルビーに関していくつかの課題を把握している。1つは工業製品を利用しているため個々のバラツキがあり感度が異なること、もう1つはシンチレータとして使用した場合の残光の問題である。感度のバラツキは校正することで対応可能であることは確認できた。しかしながら、残光の問題はデータの精度に関わってくるため今後クリアしておきたい課題である。国内で人工ルビーを生産している企業が少数なため、協力を依頼する対象が限定されているが、現在特注で加工できるかどうかを調査中である。仮に対応可能であれば、医療用(X線測定用)人工ルビーとして、特許取得等の可能性もあると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの課題であった、半導体検出器のMPPCモジュールと光ファイバー接続に関する問題は、県内の企業へ依頼した結果、大変クリアランスに優れた接続コネクタの製作ができた。その結果、診断用X線レベルではあるが非常に有意義な基礎データ収集が行えた。今年度内に我々が測定対象としている、放射線治療用X線や電子線を対象とした測定を行い、最終的な結果を得たいと考えている。光電子増倍管と比較すると、半導体検出器は精度や感度は別にしても、小型で外部電源等が必要ないため、システム全体を非常に小さくすることが可能であり、しかも安価である。半導体検出器特有の暗電流の問題、感度の問題等を抱えているが、理想としているシステムには最も適切であると考えている。暗電流の問題は測定時の初期設定を適切にすることで、解決可能であると考えているが、モジュールのチャンネル数が増えたことで、設定が非常に困難であることが解った。また、感度の問題に関しては、放射線治療時の高エネルギーX線であれば測定は可能であるとの見解が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
MPPCモジュールと光ファイバー接続の問題はクリアされたため、年度内に放射線治療装置を用いて高エネルギーX線に対する基礎データの収集を行う予定である。前述した進捗状況をでの問題点であるMPPCモジュールの初期設定や感度の問題をクリアにするための基礎データ収集に従事する。基礎データは放射線量に対する直線性や長時間曝射したときの安定性、短時間曝射時のレスポンス、複数解曝射したときの安定性など多岐に渡り測定する予定である。簡易的に測定した結果としては、放射線治療時の高エネルギーX線も充分な精度で測定できる可能性が示唆されているため、より詳細なデータ収集を行い、最終的な報告を行いたいと考えている。しかしながら、前述したセンサーとして使用している人工ルビーの問題がクリアにされていないため、平行して医療用人工ルビーの製作を行う予定でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請年度はコロナ禍のため、各種学会等には参加できなかったことにより次年度の学会等の参加費に使用する予定である。
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