研究課題/領域番号 |
19K12328
|
研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
香川 亘 明星大学, 理工学部, 教授 (70415123)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 二重鎖切断修復 / DNA修復経路 / 反復配列 / ミスマッチ塩基対 / DNAアニーリング反応 / RAD52 |
研究実績の概要 |
ヒトのゲノムDNAの約50%は,繰り返し配列である。繰り返し配列が密集するゲノム領域で生じたDNA二重鎖切断損傷は,RAD51タンパク質に依存した修復経路の他に,RAD52タンパク質に依存した修復経路がはたらくことがわかっている。RAD51に依存した修復は一般的に正確性が高いと言われているが,繰り返し配列上では,間違った場所でDNA鎖交換反応を触媒してしまう危険性があり,修復後の染色体に重大な欠失,重複,逆位,転座等の染色体異常が生じる可能性がある。一方,RAD52に依存した修復(single-strand annealing: SSA)は,切断末端同士をアニーリングする反応によって切れた染色体同士をつなぐことから,大規模な染色体異常は発生しないことが考えられる。これらの修復経路の使い分けがどのようになされているのかは不明であり,それを明らかにすることはゲノムの安定維持の機構を理解する上で重要である。 本研究では,RAD52を中心とした解析によってSSA修復経路が選択される分子機構を明らかにする。そのために,ミスマッチ塩基対の影響について,RAD52のアニーリング触媒活性を評価するin vitroとin vivoの実験系を用いて明らかにする。さらに,RAD52がミスマッチ塩基対を許容するときに重要なアミノ酸残基を,点変異体解析やアニーリング中間体の立体構造解析によって明らかにする。これらの解析から,繰り返し配列で生じた二重鎖切断が修復されるときに,どのような分子機構でRAD52に依存した修復(SSA)が選択されるのかについて明らかにすることができる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試験管内アニーリング反応系を用いたミスマッチの影響の解析で進展があった。 既に確立しているアニーリング反応を検出するゲルシフト・アッセイ法を用い,様々な種類のミスマッチ基質に対するRAD52のアニーリング触媒効率を比較した。そしてRAD52が触媒するアニーリング反応で許容されるミスマッチの頻度を明らかにすることに成功した。また細胞内アニーリング反応系に用いる細胞株の樹立にも成功した。具体的にはRAD52依存的アニーリング反応を検出できるGFPレポーターアッセイ系に,試験管内で見出されたRAD52が許容するミスマッチの種類をレポーターアッセイ系に導入した細胞株を構築した。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に構築した細胞株を用い,ミスマッチの頻度がin vivoにおけるRAD52のアニーリング触媒効率にどのような影響を及ぼすのかを明らかにする。さらにRAD52・単鎖DNA複合体の立体構造(Saotome et al., iScience, 2018)をもとにミスマッチの許容に関与するアミノ酸残基を予想し,その点変異体をin vitroの系(ゲルシフト・アッセイ法など)を用いて解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
試験管内アニーリング反応系に用いた基質DNAは、計画より少ない量で目標にしていた研究計画を達成することができた。残額は、本年度に行う試験管内アニーリング反応系に用いる基質DNAにあてる予定である。
|