研究課題/領域番号 |
19K12330
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研究機関 | 公益財団法人環境科学技術研究所 |
研究代表者 |
杉原 崇 公益財団法人環境科学技術研究所, 生物影響研究部, 主任研究員 (50715472)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 低線量率放射線 / インスリン抵抗性 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
これまで報告されたインスリン抵抗性惹起機構に関する知見では、肥満が引き起こすROS(活性酸素)産生亢進がインスリン抵抗性に重要であると提唱されている。一方、我々は低線量率(20mGy/日)放射線連続照射がマウスのインスリン抵抗性を惹起するという結果を得た。過去に低線量放射線照射によってROS産生が亢進する知見が報告されていることから、低線量率放射線照射によって惹起されるインスリン抵抗性はROS産生亢進によるものではないかと考えた。本課題では、低線量率放射線照射されたマウス及び細胞の分子生物学的解析を行うことにより、低線量率放射線照射によるインスリン抵抗性惹起機構の解明を目指す。 これまで本研究では「低線量率放射線照射された脂肪細胞のインスリン抵抗性惹起機構の解析」について解析を行い、低線量率放射線が脂肪細胞において影響を引き起こすこ可能性を明らかにした。また、低線量率放射線照射がDNAメチル化に影響を及ぼし、そのことがインスリン抵抗性に関わる遺伝子の発現に影響を及ぼす可能性を確認した。本年度は、低線量率放射線照射によるマウス個体での肥満がインスリン抵抗性の惹起に必要であると考え、低線量率放射線照射によって肥満しない系統のマウス(C3H)の血糖値等を調べることでインスリン抵抗性の解析を行った。その結果、低線量率照射によってB6C3F1メスマウスで確認されたインスリン抵抗性が、C3Hメスマウスでは見られないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時には脂肪レベルと個体レベルの二つの面から、インスリン抵抗性惹起機構を明らかにすることを目指した。昨年度は、「低線量率放射線照射された脂肪細胞のインスリン抵抗性惹起機構の解析」について解析を行い、低線量率放射線が脂肪細胞において影響を引き起こすことを明らかにした。これまで、その影響の発現機構についての解析を行い、低線量率放射線照射がDNAメチル化に影響を及ぼし、そのことがインスリン抵抗性に関わる遺伝子の発現に影響を及ぼす可能性を確認した。本年度は、低線量率放射線照射によるマウス個体での肥満がインスリン抵抗性の惹起に必要であると考え、低線量率放射線照射によって肥満しない系統のマウス(C3H)の血糖値等を調べることでインスリン抵抗性について確認する実験を行った。一方、申請時に予定していたミトコンドリア機能解析に関しては、現在進行中である。コロナ蔓延のため、研究の一部が制限されたため研究進展に一部の遅れがあるものの、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
申請時に明らかにしようとした「低線量率放射線照射された脂肪細胞のインスリン抵抗性惹起機構の解析」については、脂肪培養細胞を用いて低線量率放射線による遺伝子発現制御機序についての一部を理解できた。今後も引き続き機序を検討する予定である。また、今後はこれまで得られた知見の再現実験を行う予定である。さらに、ミトコンドリア機能への影響やオートファジーとの関連についても解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の研究が新型コロナウイルス蔓延の影響で実施困難であったため、実施研究期間の延長を申請した。そのため、次年度使用が発生した。次年度は昨年度に実施できなかった、オートファジー解析やその他予定していた細胞でのインスリン抵抗性に関する機能解析の再実験を行う。また、これまでに行った実験の論文化に必要な額を使用したい。
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