研究課題/領域番号 |
19K12331
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
富田 純平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 安全研究・防災支援部門 安全研究センター, 副主任研究員 (70637280)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ラジウム-226 / 四重極型誘導結合プラズマ質量分析計 / 迅速分析 / 天然水 / 尿 |
研究実績の概要 |
本研究は、比較的普及している四重極型誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-QMS)による226Ra迅速測定と化学収率補正用トレーサーとして放射性物質を使用することなく、試料にもともと含まれる安定Baの回収率でRaの収率補正を可能とする簡便・迅速な化学分離法を組み合わせ、管理上妥当な検出限界値(0.37 Bq/L)を担保した簡便で汎用性の高い天然水及び尿試料中の226Ra迅速分析法を開発することを目的としている。令和3年度は、作業者の内部被ばく線量評価を迅速に行うために、尿中のラジウム-226(226Ra)迅速分析法を検討した。226RaをHeコリジョンモードによる四重極型ICP-MSで測定する場合、鉛(Pb)が226Ra測定の妨害になることが明らかになったことから、陽イオン交換法によりPbをBa(Ra)から分離することとした。化学試薬を混ぜ調製した合成尿(1 L)からリン酸塩を沈殿させ、回収した沈殿にBa(1 mg)とPb(0.1 mg)を添加し、1.5M HClの試料溶液を調製した。この溶液を用いて、BaとPbの分離に適した陽イオン交換樹脂量及び溶離液量を検討した。その結果、内径15 mmのカラムに陽イオン交換樹脂を15 g充填し、試料導入後、30 mLの3M HClでカラムを洗浄し、40 mLの6M HNO3でBaを溶離することで、95%以上のPbを除去するとともにBaをほぼ100%回収できることがわかり、分離条件を決定するができた。また、令和2年度に環境放射能研究会(つくば、オンライン)で発表した四重極型ICP-MSによる226Raの測定条件と干渉元素による妨害の定量的評価の内容を研究会プロシーディングスに投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は、これまでに実施してきた四重極型ICP-MSによる226Raの測定条件及び妨害元素による影響の定量的評価に関する内容をまとめ、プロシーディングス(査読付き)に投稿し、受理された。また、尿中の226Ra分析法開発のうち、最も重要な陽イオン交換法によるBa(Ra)とPbの分離条件を決定した。しかしながら、所属研究機関内の新型コロナウイルス感染症の感染防止対策等により、実験室が使用できない期間があったことや実験に使用する消耗品類が入手できなかったこと等により、当初計画において予定していた、BaとRaの化学収率の比較や分析法の妥当性の確認まで実施することができなかったことから、現在までの進捗状況は、やや遅れている。と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に陽イオン交換法による尿中のBaとPbの分離条件を決定したが、所属研究機関内の新型コロナウイルス感染症の感染防止対策等により、実験室が使用できない期間があったことや実験に使用する消耗品類が入手できなかったことから当初計画に比べて遅れが生じたため、補助事業期間延長申請を行った。令和4年度においては、代替品の使用も含め、早急に消耗品類の手配に着手し、BaとRaの化学収率の比較や分析法の妥当性確認等、分析法の開発に必要な実験を進める。開発した分析法については、学会等での発表を通じて、専門家と議論を深め、論文投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会(開催地:日本)への参加や日本原子力研究開発機構人形峠環境技術センターにおいて、分析法開発に用いる226Raを含む地下水の採取を目的とした国内出張を予定していた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、国際学会の開催が延期となり、また、出張を取り止めて、地下水を岩石試料から作成した226Raを含む溶液で代用したこと等により、当初計画で予定していた旅費の支出が無かったことから次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、令和4年度に実施する実験の消耗品類の購入に係る費用や英文校閲に係る費用に使用する。
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