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本研究では、放射線計測により定量する場合、放射平衡を成立させるために1ヵ月程度の分析時間を必要とするラジウム-226（226Ra）分析に着目し、放射平衡を必要としない誘導結合プラズマ質量分析計（ICP-QMS）を用いた迅速分析法の開発を目的としている。
本研究は、ICP-QMSによる226Ra測定とRaの化学分離からなる。まず、ICP-QMSによる226Ra測定の妨害元素の影響を定量的に評価した。通常の測定方法ではタングステン（W）が、ヘリウムコリジョン法では鉛（Pb）の多原子イオンが226Ra測定を妨害することが明らかとなった。測定溶液中にW及びPbが1 μg/mL含まれる場合、これら元素の妨害により、226Ra濃度が本来の値よりもそれぞれ40 fg/mL、20 fg/mL高い値を示すことが分かった。本内容を取りまとめ、環境放射能研究会のプロシーディングスに投稿し、受理・掲載された。Raの化学分離では、試料1 LからRaの化学収率を試料に元来含まれるバリウム（Ba）の収率で補正する手法の開発を目指した。ICP-QMSの干渉影響を考慮し、試料からPbを除く方法を検討した。天然水試料では、濃縮方法を確立することはできなかったが、濃縮後、DGAレジンでPbを除去するとともに、BaとRaを分別なく分離できる方法を確立した。尿試料では陽イオン交換によりBaとRaをPbから分離できたが、この方法では、尿成分が残存し、ICP-QMSの測定感度等へ影響を及ぼすことから、更にDGAレジン等による再精製が必要であることがわかった（令和4年度実施）。以上のことから、尿中の226Ra迅速分析法の開発の目途が立つ知見を得ることができた。
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