人の生活に関連する放射線被ばくの影響では「発がん」が最も重要である。放射線の種類が異なると生物効果は異なり、それら放射線の発がんリスク評価を行うことは必須である。我々はこれまでPtch1遺伝子ヘテロ欠損マウスで高頻度に発生する髄芽腫のゲノム変異が、照射をしない個体と照射をした個体で異なることを報告した(放射線のシグネチャー変異)。この知見が臓器、放射線の種類が異なっても一般化できるか否かを検証することを目的とした。ガンマ線、中性子線、炭素線を照射した同マウスの終生飼育を行い、寿命短縮および発生した腫瘍ごとのリスクを評価するとともに、発生した腫瘍のゲノム突然変異解析を行うことで「異なる種類の放射線による発がんリスクはどう異なるか?」、「異なる種類の放射線により発生する「がん」の種類(発生臓器)は異なるか?」、「異なる種類の放射線による発がんメカニズムの違いは何か?」を明らかにすることとした。 令和5年度は、基底細胞がんの病理組織診断の最終診断を行い、これまでの解析結果とともに最終結果をまとめた。炭素線、中性子線被ばくは基底細胞がんの発生率を有意に増加させるとともに、中性子線誘発基底細胞がんは他の放射線誘発がんとは異なり一個体あたりの発生数が多く、病理学的組織型も異なることを明らかにした。これらの結果を、International Congress on Radiation Research (ICRR)2023にてポスター発表した。
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