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2021 年度 実績報告書

有機ヒ素化合物中毒による小脳症状発症機序解明と解毒剤探索‐治療法の提案を目指して

研究課題

研究課題/領域番号 19K12345
研究機関名城大学

研究代表者

根岸 隆之  名城大学, 薬学部, 准教授 (80453489)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード有機ヒ素化合物 / アストロサイト / 神経症状 / 小脳
研究実績の概要

本研究は「有機ヒ素化合物中毒による小脳症状発症機序解明と解毒剤探索‐治療法の提案を目指して」と題し、ジフェニルアルシン酸(DPAA)による神経影響メカニズムの解明とその影響を抑える、またはその影響からの回復を促進するような薬剤の探索に挑戦した。DPAAは茨城県の井戸水ヒ素汚染事故の主因物質であり、その井戸水を使用していた住民に小脳症状を主徴とする神経影響がみられた。評価モデルとしては、培養ラット小脳由来アストロサイトのDPAAによる異常活性化(in vitro)と成体ラットのDPAAによる行動異常(in vivo)を確立した。実際に異常活性化を抑制する薬物としては、N-アセチル-L-システイン、ジメルカプトコハク酸、D-ペニシラミンといった複数のチオール基(SH基)含有化合物が候補として上がり、構造活性相関解析を試みたところチオール基の数よりはチオール基に加えてカルボキシ基の存在が必要条件のようにみられたがそれも十分条件ではなかった。実際これらの異常活性化抑制剤には残念ながら回復促進効果はみられなかった。DPAAによる異常活性化のメカニズムについては新たにDPAAによるNFκBの活性化(核内移行)などを明らかにした。また、DPAAにばく露したアストロサイトにおいて特定の細胞質内タンパク質へのDPAAの結合が確認された。そして、DPAAに対する抵抗性は高いもののヒト小脳由来正常アストロサイトにおいてもラット由来のそれと同様の異常活性化が生じることを明らかにし、Neurotoxicologyに報告した。以上の結果から、脳内のアストロサイトがDPAAに対して高感受性であること、異常活性化抑制薬としてはチオール基を含む化合物が有望であること、異常活性化抑制薬=回復促進薬とはならないことなどが明らかとなり、さらなる解毒剤探索の方向性を示すことに成功した。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Diphenylarsinic acid induced activation of MAP kinases, transcription factors, and oxidative stress-responsive factors and hypersecretion of cytokines in cultured normal human cerebellar astrocytes2022

    • 著者名/発表者名
      Shoto Sasaki, Takayuki Negishi, Takamasa Tsuzuki, Kazunori Yukawa
    • 雑誌名

      Neurotoxicology

      巻: 88 ページ: 196-207

    • DOI

      10.1016/j.neuro.2021.12.002

    • 査読あり
  • [学会発表] ラット小脳由来アストロサイトにおけるメチル水銀による MAPキナーゼ、転写因子、および酸化ストレス応答因子の異常活性化と抗酸化物質による抑制2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木翔斗、根岸隆之、都築孝允、湯川和典
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] ジメルカプトコハク酸はジフェニルアルシン酸によるアストロサイトの異常活性化に対して抑制効果はあっても回復促進効果はない2021

    • 著者名/発表者名
      根岸隆之、佐々木翔斗、佐藤彩花、加藤万里奈、吉田 光、若杉周弥、都築孝允、湯川和典
    • 学会等名
      第48回日本毒性学会学術年会
  • [学会発表] ジフェニルアルシン酸ばく露によるヒト小脳由来正常アストロサイトにおける脳内サイトカインの分泌亢進2021

    • 著者名/発表者名
      佐々木翔斗、都築孝允、湯川和典、根岸隆之
    • 学会等名
      第48回日本毒性学会学術年会
  • [学会発表] ジフェニルアルシン酸による培養ラット小脳アストロサイトの異常活性化におけるPKCの役割2021

    • 著者名/発表者名
      根岸隆之、近藤優帆、佐々木翔斗、都築孝允、湯川和典
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
  • [学会発表] ラット小脳由来アストロサイトにおけるメチル水銀誘発性の MAPキナーゼ、転写因子、および酸化ストレス応答因子の活性化2021

    • 著者名/発表者名
      佐々木翔斗、根岸隆之、都築孝允、湯川和典
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
  • [学会発表] 有機ヒ素化合物ジフェニルアルシン酸中毒による神経症状の発症メカニズムの理解とそれに基づいた 治療法提案の試み2021

    • 著者名/発表者名
      根岸隆之
    • 学会等名
      第64回日本神経化学会大会
    • 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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