研究実績の概要 |
本研究では、化学物質によるスプライシング異常と毒性発現機構を明らかにすることを目的としている。ほすでに当研究室のsiRNAを導入した細胞の結果から、スプライシング制御因子のserine-arginine rich spricing factor 5(SRSF5)が亜ヒ酸の毒性に関与していることを見出している。そこで、本年度は、1)亜ヒ酸の毒性発現に他のSRSFsが関与しているのか、2)SRSF5が制御しているmRNA群を明らかにすることを目的とした。 1)標的部位の異なる2種類のSRSF(SRSF1,2,3,6,7,9) siRNAを導入したヒト表皮角化HaCaT細胞に、亜ヒ酸を曝露し24時間後の細胞毒性を検討した。その結果、SRSF1,2,3,6,7 siRNAを導入したHaCaT細胞では亜ヒ酸の毒性に変化は見られなかった。SRSF9 siRNAを導入した細胞では使用したsiRNAにより異なる結果を得た。一方で、SRSF5 siRNAを導入したHaCaT細胞は亜ヒ酸に対する感受性が亢進していた。これらの結果から、SRSF5にスプライシングを依存している遺伝子群の中に、亜ヒ酸の感受性を制御する因子が存在することが示唆された。 2)SRSF5にスプライシングを制御されている因子を探索するために、controlおよびSRSF5 siRNAを導入したHaCaT細胞からRNAを抽出し、次世代シークエンサーにてmRNA量の変化を検討した。BaseMeanで10以上、controlと比較して2倍以上減少した遺伝子群の中から選択した5遺伝子のmRNAについてRealtime-PCRで検討したところ、確かにSRSF5 siRNAによりこれらのmRNA量の減少が検出できた。現在、これらの遺伝子群のsiRNAを導入した細胞を準備し、亜ヒ酸への感受性について検討を進めている。
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