研究課題/領域番号 |
19K12350
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
小川 久美子 国立医薬品食品衛生研究所, 病理部, 部長 (70254282)
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研究分担者 |
チョウ ヨンマン 国立医薬品食品衛生研究所, 病理部, 室長 (00370940) [辞退]
井手 鉄哉 国立医薬品食品衛生研究所, 病理部, 主任研究官 (60837607)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノ銀 / 粘膜バリア / 大腸炎 / 生体影響 |
研究実績の概要 |
サイズの異なる直径 10 nm、60 nm 及び100 nm のナノ銀をマウスに等量単回腹腔内投与(0.2 mg/匹)したところ、10 nmのナノ銀 を投与した動物のみが24 時間以内に死亡又は瀕死状態となり、投与後6 時間では肝臓逸脱酵素の上昇を伴い、うっ血、単細胞壊死、細胞内封入体等の病理所見が観察された。このことから、ナノ銀の生体影響には、サイズが大きく影響することが明らかとなった。これまでの健常動物を用いた検討では、経口摂取によるナノ銀の毒性影響は限定的と考えられている。また、通常、消化管粘膜は粘液によって保護されており、腸管内のナノ銀が直接細胞に接する機会は少ないと考えられる。しかし、ヒトでは慢性胃炎や潰瘍性大腸炎なども稀ではなく、そうした粘膜バリアが破綻した条件下では、経口暴露したナノ銀が直接腸管上皮や間質細胞に接することとなり、異なる生体反応及び細胞内挙動を示し重篤な毒性影響を誘導する懸念がある。本研究では、BALB/c雌性マウスを用いて、dextran sulfate sodium salt (DSS) の飲料水投与で誘発した大腸炎によって粘膜バリアが破綻した状態における、ナノ銀の経口暴露による毒性影響の検討を目的としている。DSSはげっ歯類に大腸炎を誘発することが知られているが、分子量に幅があるため、ロットによって誘導される炎症に違いがある。本年度は、適切なロットを入手しDSS投与の条件設定による大腸炎誘発モデル系の確立を行った。1,2及び3%DSSを1週間飲水投与し、大腸について病理組織学的に検討した。期間中の体重に群間の差はなく3%まで忍容性を示し、大腸の病理組織学的検討では1%群から用量依存的に胚細胞の減少、粘膜層への好中球浸潤が観察され、2%群から、大腸中部に軽度のびらんが観察されたことから、3%の投与がモデル系として適切と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一定量入手可能なDSSのロット決定及び入手に時間を要し、投与実験の開始が若干遅れたが、DSSの投与濃度は確定できたため、令和2年度の計画通り遂行可能と考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の実験結果に沿って、マウスへの3%DSS 飲水投与及びサイズの異なるナノ銀粒子の単回経口投与を実施し、投与後6時間及び24時間の一般状態観察の後、屠殺剖検を行う。血液生化学検査及び大腸粘膜、肝臓について凍結サンプル及びホルマリン固定サンプルの採取を行う。 採取したサンプルについて各臓器のICP-MSによるナノ銀の含有量及び病理組織学的検討を実施し、ナノ銀のサイズに特異的な毒性の有無及び大腸炎の影響について検討する。必要に応じて、追加の投与実験をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
ナノ銀の購入が令和2年度にずれ込んだため、令和元年度の支出が抑えられることになった。
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