研究課題/領域番号 |
19K12352
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研究機関 | 福岡県保健環境研究所 |
研究代表者 |
宮脇 崇 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (70346691)
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研究分担者 |
古閑 豊和 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 主任技師 (30708467)
平川 周作 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (90527623)
門上 希和夫 北九州市立大学, 環境技術研究所, 教授 (60433398)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水環境 / 新興化学物質 / 網羅分析 / 全自動同定定量データベース / 起源解析 / マーカー |
研究実績の概要 |
近年、河川などの水環境からパーソナルケア製品、難燃剤、可塑剤等の新興化学物質が多数検出されるようになったが、それらの排出実態についてはよく分かっていない。本研究では、それらの発生源として考えられる各種事業場排水を対象に有機物質及び無機物質の網羅分析を行い、各業種事業場からの化学物質の排出実態を明らかにする。さらに、起源特異性を示すマーカー物質を探し出し、水環境から検出される化学物質の発生源を推定する手法を開発する。 本年度は、はじめに分析方法の検討を行った。有機物質については、液液抽出法や固相抽出法(カートリッジ法含む)を対象に標準物質による添加回収試験を行い、その妥当性について評価をした。測定系にはGC-MS自動同定定量データベース(約1000物質登録)とLC-QTOF-MS自動同定定量データベース(約500物質登録)を用いた。無機物質(金属類)については、認証標準物質(河川水)を対象にICP-MSによる半定量解析を行い、妥当性評価を行った。 試料分析結果の概要は次のとおりである。計16種の事業場排水のほか、それらの放流先である2つの河川水を対象に網羅分析を行った結果、有機物質ではPPCPs等の生活由来化合物が両試料から検出されたほか、フェノール類やアニリン類等の工業系化合物も複数検出された。また、無機物質では、亜鉛やマンガンをはじめとする元素が複数検出された。これらの中には起源特異性を示す物質がいくつかあり、発生源を推定するマーカーになる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目的は、①各種事業場排水を対象に、約1500物質を登録したデータベース等による網羅分析を行い、業種毎の化学物質の排出実態を明らかにすること、②事業場排出水や河川水から高濃度、高頻度で検出される物質をピックアップし、起源特異性を示すマーカー候補物質をリスト化することである。 本年度は、はじめにLC-QTOF-MS測定用の分析法として、迅速前処理カートリッジを用いたスクリーニング法について検討を行った。その結果、評価対象とした85物質のうち71物質(オクタノール水分配係数:-0.46~8.20)において目標回収率(50~150%)を満たすことを確認した。環境実態調査では、都市域および工場地帯にある2つの河川を対象にした。各河川水のほか、放流先の事業場の排出水計16試料を対象に網羅分析を行った結果、有機物質ではPPCPs、ステロール類、リン酸エステル類、フェノール類等が検出された。また、無機物質では亜鉛、マンガン等が検出された。これらの物質の中で、河川水および排出水の両方から検出され、起源特異性を示す可能性があるものについてはマーカー候補物質としてリストアップした。以上の結果から、初年度の研究目的は概ね達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、各種事業場排水のほか、安定型処分場の浸出水も対象として網羅分析を行う。一部の試料については、ノンターゲット分析を行い、データベース登録されていない未知物質の同定を試みる。また、放流先の河川水についても同様に網羅分析を行い、マーカー候補物質をリストアップする。 マーカー候補物質の中に、水・オクタノール分配係数が4未満の親水性有機物質が含まれる場合は、環境中における安定性を検証するため、分解性試験を実施する。分解性試験は、生分解性試験と光分解試験を予定しており、それらの試験結果から水環境においてマーカーになる物質を確定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:マーカー候補物質のリストアップ作業に時間を要したため、標準物質の購入が当該年度内に間に合わなかったため。
使用計画:その後、マーカー候補物質のリストアップ作業が完了したため、令和2年度に標準物質を購入する。
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