河川を介した富士山系地下水の流入による駿河湾の生物生産への影響を明らかにすることを目的として、駿河湾に流入する主要河川のうち、富士山系地下水が混入している狩野川および富士川と、混入していない安倍川および大井川の水質を河口に最も近い流量観測所で調査した。昨年度の調査により、リン酸イオンとケイ酸の濃度が、富士山系地下水が混入している狩野川と富士川で高いことが明らかとなったが、今年度も継続して調査することでリン酸イオン:ケイ酸の比も狩野川と富士川で高いことが示され、リン酸イオンの供給源としての富士山系地下水の重要性を示唆した。また、上記の4河川と富士山周辺の湧水で微量金属元素7種の濃度を測定した結果、狩野川以外ではバナジウムとストロンチウムが7種全体の90%以上を占めていた。バナジウムとストロンチウムは玄武岩溶岩を帯水層とする地下水に多いことが報告されているが、本結果のバナジウム濃度とストロンチウム濃度には反比例の関係があり、バナジウムとストロンチウムが溶岩の性質や帯水層の成因の違いを反映している可能性が考えられた。一方、有機物濃度は、粒状有機炭素、溶存有機炭素ともに圧倒的に大井川が高く、溶存有機炭素濃度は安倍川で顕著に低いことが明らかとなり、富士山系地下水が混入している狩野川と富士川は駿河湾に対する有機物の供給河川として中程度の規模を有することがわかった。水温、電気伝導度、pHなども含めた主成分分析の結果、狩野川と富士川を比較すると富士川の方がより富士山系地下水の影響を強く受けていることが示された。
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