研究課題/領域番号 |
19K12356
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
梅原 亮 広島大学, 環境安全センター, 助教 (40825791)
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研究分担者 |
西嶋 渉 広島大学, 環境安全センター, 教授 (20243602)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生息地予測 / 瀬戸内海 / 底質特性 / ベントス / Maxent |
研究実績の概要 |
本研究では、瀬戸内海を対象として個人研究では到底収集できない海域全体のベントスとその生息環境情報を環境省が実施した延べ1,200地点以上のマクロデータから、これまで特定の希少種の分布推定に利用されてきた生息地予測解析(Maxent model)を瀬戸内海に出現する主要種に適用し、底質環境から各ベントス種の出現率を推定するモデルを構築することを目的とする。 昨年までに、1980年代から現在までの4回分の瀬戸内海のベントスおよび底質環境のデータを整理し、全年代のベントスデータを用いて出現頻度の多い順に50種を選定した。また、代表種としてシズクガイを選定し、Maxentの予測確率と実測確率の関係を評価したところ、概ね推定可能であることが分かった。 本年度は、出現地点数が比較的多く、汚濁耐性が異なる代表種10種を選定し、モデル精度向上のために各ベントス種が偶発的に存在した地点を除き、Maxent解析を実施した。10種のベントスにおいて、2~4つの底質項目を使用することでモデル精度基準(AUC)を満たす十分な予測モデルを作成でき、寄与の高い底質項目は、粒度組成(礫分や泥分)、水深、ORP、TP、およびCODであることがわかった。近年のセンサー技術の向上により、採泥なしで底質項目を推定できる手法が開発されつつあるが、それらの採泥を伴わない項目のみ(粒度組成、水深、ORP)を用いて推定した場合でも、AUCの大幅な低下は起こらず十分な解析精度のモデルを得ることが可能であった。また、今年度の調査により得られた広湾の底質項目を用いて、Maxentにより4種のベントスの分布確率を推定したところ、モデル結果は実際のベントスの出現とよく対応しており、将来予測についても評価できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Maxent modelによるベントスの予測出現確率の推定において、モデルの推定精度の向上ができ、瀬戸内海の代表的な10種については精度良く推定できるようになったため、技術的な面ではほぼ課題を完了できたと言える。また、他海域への適用のためのMaxent解析における重要な底質項目を明らかにでき、センサー技術との併用を見越した採泥を伴わない底質項目のみでのMaxentモデル推定も行えることがわかったため、簡易迅速なベントスの生息確率の推定手法の確立に向けてさらに前進した。また、2020年度の広湾の実測データとのクロスチェックによりモデルの妥当性が確認され、将来予測についても解析可能であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに解析種を増やし、他海域への適用の可否についても検討し、また将来における瀬戸内海の底質環境変化の可能性を考えて、妥当な範囲内で底質性状を変化させた場合の瀬戸内海のベントス群集の応答など、将来予測についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で国際学会が延期となったため旅費がかからず、資料整理を自分で実施したため人件費が不要、また英文校閲費は必要とならず、国内学会および国際学会の参加費不要のため残額が生じた。繰越分は底質分析に関わる試薬や分析用消耗品、ハードディスク等の購入に充てる。また、国内学会の参加費と旅費にあてる予定。
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