本研究「ラビリンチュラ類による揮発性有機化合物の生成の検討と環境影響評価」の初年度には、ラビリンチュラ類Aurantiochytrium sp.、Botryochytrium radiatum 及びSchizochytrium sp.がCH3Cl、CH3Br、CH3Iを生成すること、その生成量は種によって異なること、単位生物量当たりのモノハロメタンの生成速度を算出し海洋でのラビリンチュラ類の細胞密度と海洋でのモノハロメタン濃度との比較からB. radiatumは海洋でのCH3Cl濃度の6-23%、CH3I濃度の0.5-0.6%を説明出来うるため、海洋でのCH3Clの主要な生成源の一つとなりうることが明らかとなった。2年目には、B. radiatumを対象に培養温度を20℃、25℃、30℃でそれぞれ培養した結果、モノハロメタンの生成は培養温度による影響を受けることが明らかとなった。 最終年度には、ラビリンチュラ類Parietichytrium sarkarianumによるモノハロメタン生成への温度依存性を調べた結果、温度上昇によってCH3Iは生成量が減少しCH3Clは生成量が増加することが分かった。また、人工海水及びろ過海水での培養実験を行った結果、人工海水ではCH3Cl生成量が減少し、モノハロメタンの生成に微量金属等が影響している可能性が示唆された。 これまでの研究成果から、海水の広い温度範囲においてモノハロメタンを生成するラビリンチュラ類が存在すること、また将来の地球環境の温度変化が、ラビリンチュラ類によるモノハロメタンの生成に影響を与えうることが明らかとなった。ラビリンチュラ類は海洋における分解者や脂肪酸の一次生産者としての役割だけでなく、モノハロメタンの生成源としての役割も担っていることが明らかとなった。
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