ディーゼル排気ガス(DE)に由来する二次生成有機エアロゾル(SOA)を大気汚染物質のモデルとして、自閉症のような社会的支配行動および神経免疫応答について検討することを目指した。2019年度では妊娠12.5日目のSprague-Dawleyラットに、腹腔内注射により600 mg/kgのバルプロ酸(VPA)を投与した。VPA誘発自閉症の雌雄ラットは、社会性の障害と社会的新規性の好みの障害を示した。 VPAに曝露された雌雄のラットの海馬におけるセロトニン受容体(5HT5B)、神経栄養因子(BDNF)などの遺伝子のmRNA発現が優位に減少し、インターロイキン(IL)-1βや腫瘍壊死因子(TNF)-αなどの炎症性サイトカインのmRNA発現が優位に上昇することが明らかになった。2020年度では胎児期・乳児期にDE-SOA曝露された成体ラットでは、社交性テストで、対照群と比べStranger(1)ラットのカップの探査時間が有意に短かった。社会的新奇性優先度テストでは、対照群でStranger(2)ラットのカップに探査時間が長く、逆に、DE-SOA曝露された群では、Stranger(1)ラットの カップの探査時間が有意に短かった。さらに、発達期にDE-SOAに曝露された雌雄のラットの海馬における5HT5B、BDNFのmRNA発現が優位に減少し、IL-1βや酸化トレスマーカーヘムオキシゲナーゼ(HO)1などのmRNA発現が優位に上昇することが明らかになった。2021年度では実験2の発達期にDE-SOA曝露された雌雄のラットの海馬における肥満細胞やミクログリアの活性化などの神経免疫反応について組織学と免疫細胞化学方法で調べた。ラットの海馬における肥満細胞をトルイジンブルーで染色して検討した結果、肥満細胞の増加、さらに、活性化されたミクログリア細胞の増加がDE-SOA曝露群で明らかになった。
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