研究課題/領域番号 |
19K12364
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宮越 昭暢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30392666)
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研究分担者 |
濱元 栄起 埼玉県環境科学国際センター, 土壌・地下水・地盤担当, 専門研究員 (40511978)
谷口 真人 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 教授 (80227222)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 都市地下環境 / 地下温暖化 / 地下水環境 / 地盤沈下・地下水位観測井 / 持続性評価 |
研究実績の概要 |
本研究は都市域地下熱環境の持続性評価に向けて,国内都市域の地下温暖化の実態解明と過去10~30年程度の期間に増加した地下蓄熱量の推定を目的とする。主たる研究対象地域は世界有数の大都市圏を構成する東京,大阪周辺に加えて,地下水流動が活発な地域である熊本周辺の三地域である。複数の観測井において繰り返し観測されてきた地下温度データに着目し,過去データの収集と再評価,本研究の観測により最新データを補間した現在データとの比較と解析により,都市域-郊外における地表付近から地下100m程度までの温度変化を明らかにする。また,過去-現在データが示す断続的な変化を補間して短期-長期の変化傾向を把握するため,複数の地点において地下温度モニタリングを実施して変化の傾向と連続性を評価する。観測データに基づき明らかにする地下温暖化について,都市化の指標となる土地利用の変化や地下水開発状況,地質情報を併せて評価し,地下温暖化の分布と上昇率の評価,地下蓄熱量の推定と形成要因の検討を試みる。 本年度は,三地域の過去データを収集するとともに,既往研究から2016年以降の現在データを収集した。また,東京周辺(埼玉県内)の4地点において,既設の地下温度モニタリング観測地点の機器更新を実施した。これにより本研究のために地下温度モニタリングの継続実施と既往データを活用が可能となり,連続的かつ微細な変化を検出することができた。次年度はデータ収集を継続し,空白域・空白期間を補間する。また,地下温暖化の評価に必要となる都市化に関する情報の収集と,現在は東京周辺に限定される地下温度モニタリング地点について地点追加を検討する。さらに,我が国の地下温暖化の特徴を明らかにするためには,海外各都市域の研究事例との比較が有効である。本研究の発展的な取り組みとして,国際学会での情報収集や海外研究者との意見交換を通して進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の初年度においては,本研究の基盤となる地下温度データの収集を着実に遂行することが求められた。具体的には,①対象都市域の選定,②過去データの収集,③現在データの収集もしくは観測の実施による最新データの追加が必要とされた。①については,都市域の規模,既往研究から想定される地下水流動の特徴,過去の観測状況や観測井の整備・運用状況を踏まえて,東京周辺,大阪周辺,熊本周辺の三地域を選定した。②については,主に既往研究などに基づいて公表されている過去データを収集した。その過程において,これら過去データには精度のばらつきが認められ,データ比較における問題となった。このばらつきの要因は,観測手法や使用機材等に起因していると考えられたため,必要に応じて当時の観測状況に関する情報を追加で収集して過去データを再評価することで,この問題に対応した。③については,過去データの観測地点の中から東京周辺(埼玉県内4地点),大阪周辺(2地点),熊本周辺(10地点)において2016年以降に測定されたデータを既往研究から現在データとして収集した。また,地下温度モニタリングについては,既設の観測地点(埼玉県内4地点)において機器を更新し,本研究のための継続的なモニタリングの実施体制の構築と既往データの活用が可能となった。これにより,断続的である過去―現在データの比較による地下温度の長期変化の傾向について,モニタリングにより得られる連続的な変化の傾向を併せて検討することが可能となった。以上の通り研究計画に沿って進められており,実施上の問題には対応できているため,概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究において,データの空白域・空白期間を補間するために,過去・現在データの継続的な収集を行う必要がある。また,これら地下温度データの統合と評価のために,モニタリングデータ,観測井周辺の土地利用変化や地下水開発状況,地下地質情報の収集を併せて実施し,本研究の目的である地下温度分布と上昇率の評価,地下蓄熱量の推定と形成要因の検討に取り組む。次年度においてはデータ収集を継続して実施する。具体的には最終観測年が古い地点において野外調査を実施し最新データの追加を試みる。また,過去データと現在データに見られる変化の断続性・連続性を評価するために,効果的な地点を選定の上,モニタリング地点の追加を検討する。また,観測井周辺の各種情報については,施設設置報告書等の既往文献の調査を実施して必要な情報を収集する。さらに,国際学会等における初年度の成果発表や情報収集,海外研究者との意見交換を通じて,ヨーロッパや北米など,都市化の状況が異なる海外の都市域と比較することで,我が国における地下温暖化の実態や特徴を明らかにできる可能性が見えてきた。本研究の発展的な取り組みとして継続して実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において申請時に調達を計画していた地下温度測定のためのサーミスタ温度計について,申請額よりも交付額が減額されており,今年度購入ができなかった。そのため,関連する研究を次年度以降に実施することとし,次年度に繰り越した。繰り越し分は,次年度交付額と併せてサーミスタ温度計の調達と当該機器の使用を含めた野外調査費用として支出する。その他,国際学会参加の計画変更があり,次年度使用額が生じた。これについても,次年度以降に計画する学会参加や調査旅費として支出することを計画している。
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