研究課題/領域番号 |
19K12367
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
水川 薫子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50636868)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生物濃縮 / 溶存態 / 懸濁態 / 超疎水性化合物 / 曝露経路 / 直鎖アルキルベンゼン / 二枚貝 |
研究実績の概要 |
本研究では、疎水性の高い有機化合物の曝露経路による生物濃縮性の違いを調べるために、溶存態経由の寄与が大きいと考えられるムラサキイガイと、懸濁態経由の寄与が大きいと考えられるミドリイガイを用いた飼育実験を計画している。対象化合物は疎水性の高い(logKow7.0-9.2)炭素鎖10-14の直鎖アルキルベンゼン(LABs)とした。2019年度は二枚貝の飼育方法の確立、曝露方法の検討および予備の曝露実験を行った。 予備試験では、LABsを環境雰囲気下で新品のポリエチレン製レジンペレットに吸着させたものを曝露源とした。両種の二枚貝は、ガラス繊維ろ紙(GF/F)でろ過をした人工海水中で馴致させた。その後、水面にLABs吸着ペレットを浮かせることにより、ペレットから溶出したLABsを両種の二枚貝に曝露させた。曝露は0日目、7日目にLABs吸着ペレットを入れ替え、合計15日間の曝露を行った。得られた二枚貝は軟体部をホモジナイズしながらジクロロメタンにて抽出を行い、二段階のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、ガスクロマトグラフ質量分析計で同定・定量した。ムラサキイガイは曝露前後で各3個体ずつ、ミドリイガイは飼育および馴化がうまくいかず曝露後1個体のみの分析となった。 結果は、ムラサキイガイでは炭素鎖11-13のうち、複数の異性体で曝露前と比較して優位に割合が増加した。ミドリイガイは1個体のみの分析となったが、炭素鎖12のLABsが最も高い割合を示した。既存の研究では、自然環境下のミドリイガイは炭素鎖13のLABsが最も高い割合を常に占めており、それは懸濁体の寄与によるものと予想されていた。本実験では、懸濁粒子が少ない環境下で溶存態による曝露を行ったことにより変化が生じたと考えられた。今後は飼育系を確立し、異なる実験系も加えた本実験を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に行った予備実験では、試料数は少ないながらも仮説を裏付ける結果を得ることができた。現在までの結果より、今後の本実験における課題も見つかり、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今回の予備実験では組成の変化が認められたが、より詳細な結果を得るためにはLAB吸着プラスチックの濃度を高くし、曝露量を多くする必要がある。そのため、曝露源の作成方法について改良を行う。また、実験水槽のつなぎ目部分が樹脂製であると、曝露期間中におけるLABsの吸着および排泄期間中における溶存態への溶出が懸念されるため、本実験ではオールガラス水槽を用いた実験系の確立を行う。また、ミドリイガイの飼育がうまくいかず個体数が少なかったことから、飼育条件を改良する必要がある。 本実験では、対照区として堆積物を水槽中に入れた実験系やLABsを吸着させていないレジンペレットを入れた実験系を設ける予定である。その際、生物濃縮を速度論的に議論するために、排泄期間を含めた実験期間を設定することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に必要なオールガラス水槽の作成業者の探索、選定に時間を要し、2019年度に購入することができなかったため。この物品は、2020年度に購入予定である。
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