本研究では、アメーバ内のレジオネラ属菌種間の相互作用に着目し、アメーバ内での動態およびゲノムワイドな多株比較解析からレジオネラ属菌種間のゲノム上の可動性遺伝領域の構造及び組換えの実態を明らかにし、さらにオミクス解析によるアメーバ内のレジオネラ属菌の挙動を分子レベルで明らかにする。 今年度は、浴槽由来のL. pneumophilaを用いてAcanthamoeba sp.とHartmannella sp.における生存能および増殖能の違いを解析した。Acanthamoeba sp. とHartmannella sp.に感染後24時間のL. pneumophilaの菌数を比較したところ、Acanthamoeba sp.では29倍の菌量に増加したのに対し、Hartmannella sp.では2倍しか増殖しなかった。また、感染48時間後には、Acanthamoeba sp.はほぼ死滅しているのに対し、Hartmannella sp.ではシスト化が進んだ像が観察された。この宿主であるアメーバの種類における増殖能の違いについて、宿主アメーバの存在下でL. pneumophilaの遺伝子発現の変動を30分から60分のポイントでRNA-seqにより網羅的に解析したが、宿主アメーバの違いによる顕著な差は認められなかった。従って、宿主のアメーバに侵入後の遺伝子発現の変動が宿主依存的に異なることでアメーバ内の増殖率に差が出る可能性が示唆された。
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