研究課題/領域番号 |
19K12380
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
岡 真理子 鳥取大学, 農学部, 准教授 (20324999)
|
研究分担者 |
宮本 健助 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (10209942)
山口 武視 鳥取大学, 農学部, 教授 (30182447)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | アッケシソウ / 種子発芽 / バイオマス / 細胞壁関連酵素 |
研究実績の概要 |
栽培にあたって面積当たりの収量を増やすためには発芽しない種子を減らす必要があることから、アッケシソウの発芽特性について調べた。アッケシソウの種子は、外皮を剥ぐと発芽しなかった。種子の大きさの違いによる発芽率を調べたところ、種子が大きいものほど発芽率が高いことが示された。採種年度の異なるアッケシソウの種子を用いて発芽させたところ、保存期間が3年以上のものは発芽しなかった。これらのことから、アッケシソウの種子の保存期間は3年以内に留め、外皮がある大きな種子を選んで播種すると発芽率を上げることができ、それに伴って面積当たりの収量の増加が見込めると考えられた。 また、個体あたりの油脂生産を増加させるためには、アッケシソウのバイオマスの増加が望まれる。そこで、アッケシソウの成長促進のメカニズムを調べた。植物の成長はセルロースやヘミセルロース、ペクチン等の多糖類で構成される細胞壁によって細胞伸長が制限されている一方で、細胞壁に緩みを生じさせることにより細胞壁の伸展性を高め、細胞伸長を促進している。今年度の研究においてはアッケシソウの細胞壁の伸展性や緩みに関わる細胞壁関連酵素に着目し、セルロースを分解し細胞壁に緩みをもたらすセルラーゼとペクチンを架橋させて細胞壁の強度を高めるペクチンンメチルエステラーゼの活性を調べた。アッケシソウの成長が促進されるNaCl100 mM処理区においては、セルラーゼ活性がNaCl無処理区と比較して約2 倍上昇した。また、細胞伸長とセルラーゼ活性の増加は正の相関を示した。一方、ペクチンメチルエステラーゼはNaCl 処理により低下した。これらの結果から、アッケシソウにおいてはNaClによりセルラーゼ活性が上昇するとともにペクチンメチルエステラーゼ活性が低下することによって細胞壁に緩みが生じ、細胞伸長が促進される可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から自生地調査に行くことが困難であり、アッケシソウ成長時の自生地土壌の栄養条件を調査することができなかったことから、栽培における栄養条件の検討をすることが難しかった。栽培条件の検討に少し遅れをとったものの、栽培化にあたって重要であると考えられる発芽特性を調べ、発芽率を上昇させることのできる条件を明らかにしたことにより、面積当たりの個体数の増加に繋がるものと考えられる。バイオマス増加の環境条件の十分な検討は次年度の課題となったが、アッケシソウのバイオマスの増加にはNaCl存在下で細胞壁の主成分であるセルロースを分解する酵素であるセルラーゼの活性が高まり、細胞壁において架橋により細胞壁強度を強める働きをするペクチンンメチルエステラーゼの活性が低下することにより、細胞壁の緩みが生じ、細胞伸長を促進することが一因であることを明らかとした。現在までに部分配列を決定できた脂肪酸合成に関わる酵素遺伝子の発現量をNaCl無処理区と処理区で比較しているが、現在は十分に成長に差異が見られる段階のみで比較していることから、NaCl処理期間の差異による比較検討が必要であると考えており、NaCl処理期間の違う植物において遺伝子発現量と脂肪酸含量を比較する予定にしている。アッケシソウのバイオマスを上げる栽培条件の検討については当初の計画よりも少し遅れは見られるものの、最終年度において栽培方法を工夫することにより、当初計画していた項目を実施できるものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、アッケシソウの収量が増加する栽培条件・方法を検討するとともに、アッケシソウの成長に関わる植物ホルモンを明らかにする。栽培周期を早めるために、栽培条件の検討は、水耕栽培や寒天培地を使った栽培などで行うことを予定している。脂肪酸合成阻害剤を処理したアッケシソウの形態変化を調べ、アッケシソウにおける脂肪酸の役割を明らかにしたいと考えている。また、アッケシソウの成長に関わる植物ホルモンの種類、濃度についても検討を行い、そのときの脂肪酸含量を調べるとともに植物体が吸収したNaClの量についても検討する。脂肪酸生合成の調節機構を明らかにするために、アッケシソウの脂肪酸生合成に関わる遺伝子の発現をNaClや植物ホルモンの処理期間の異なる植物において比較する。さらに、異なる塩濃度で生育させたアッケシソウの脂肪酸含量および脂肪酸合成に関わる遺伝子の発現量を調べる。それらの結果から、アッケシソウの脂肪酸生合成の調節について総合的に考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、学会等がオンラインで開催されたため、旅費として計上していた予算を使用しなかったため、その分を次年度に繰り越すこととなった。
|