塩湿地で生育するアッケシソウは、他の植物の生育が難しい高塩濃度条件下でも生育可能な好塩性植物であり、油脂を種子や植物体内に蓄積する油糧植物であるとともに塩を吸収して体内に塩を蓄積することが知られている。そのため、アッケシソウの栽培は、他の植物が育たないような塩害地域での除塩や植物油生産につながると考えられる。本研究においては、塩の蓄積および油脂生成について調べた。さらに、それらに対する植物ホルモンの影響を調べた。 アッケシソウ植物体内のナトリウム含量は、NaCl処理濃度が高くなるほど、また、栽培期間が長くなるほど増加した。しかしながら、種子形成後の乾燥した植物の地上部および種子からはナトリウムはほとんど検出されなかった。このことから、除塩のためには植物を採取する時期を検討する必要があると考えられた。乾燥重量あたりの油脂含量はNaClにより変化しなかったが、NaClにより植物体の重量が大きくなるため、個体あたりの油脂生産量は増加した。地上部においては、NaCl処理により飽和脂肪酸が減少し、不飽和脂肪酸が増加したため、高塩濃度条件に適応するために不飽和脂肪酸を増加させている可能性が示唆された。 植物ホルモンの影響を調べたところ、エチレン前駆体である1-aminocyclopropane-1-carboxylic acid (ACC)、合成オーキシンであるナフタレン酢酸、アブシジン酸処理区でコントロール区と比較して新鮮重量および乾燥重量が増加し、ACC処理区では乾燥重量当たりの油脂含量が増加した。 以上の結果から、アッケシソウは、ある程度の高塩濃度環境下で成長が促進されるとともに塩を体内に蓄積すること、塩存在下で植物体が成長することで油脂採取量が増加することが示され、アッケシソウを収穫する成長段階を考慮することで、塩害地域で除塩や植物油生産が可能であると考えられた。
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