初年度は,各機能遺伝子のmRNA転写量と酵素活性との関係を明らかにすることを目的とし、アンモニア酸化細菌の回分式培養槽を用いて、安定期間の亜酸化窒素生成挙動および関連遺伝子の転写量を調べた。安定運転期においては、アンモニア酸化や亜酸化窒素の生成、加えてamoA転写量あたりのnirK及びnorBの転写量には大きな変化は見られなかったが、曝気を通常より継続するとアンモニア酸化及び亜酸化窒素生成が増加する一方、amoA転写量あたりのnirK及びnorBの転写量は低下する傾向を示した。 2年目は、窒素または一酸化窒素の30分間強制散気の影響を調べた。アンモニア酸化は、窒素散気後の曝気工程において減少し,逆に一酸化窒素散気後は若干増加する結果が得られた。亜酸化窒素の生成についても窒素散気後に低下したが、転換率には変化は見られなかった。一方,一酸化窒素散気後は転換率自体も低下する結果が得られ、当初想定していた仮説を示唆したが、機能遺伝子転写量の測定結果から裏付けるまでには至らなかった。 3年目は、アンモニア酸化細菌自身による一酸化窒素生成の影響を調べるため、無酸素工程を90分および360分に設定して実験を行った。その結果、無酸素時間を伸ばすことで亜酸化窒素の生成が増加する一方、転換率モデルを用いた評価により、曝気工程の継続とともに直接的な効果としては転換率が減少していることが示唆された。一方、機能遺伝子転写量の調査から、amoA転写量とhao転写量及びnirK転写量とは一定の正の相関が得られたが、norBは、無酸素工程が長くなるほどamoA転写量に比して増加する傾向を示した。このことから、一酸化窒素の存在によってnorBが活性化して亜酸化窒素が生成される一方、nirKの相対的な応答抑制による亜酸化窒素生成ポテンシャルの減少が同時に生じていることが示唆され、仮説は概ね検証できたと考えている。
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