研究課題/領域番号 |
19K12388
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
稲葉 一穂 麻布大学, 生命・環境科学部, 教授 (60176401)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金属硫酸塩修飾型吸着剤 / ヒ素 / セレン / 包埋加工 / アンモニア |
研究実績の概要 |
(1) ヒ素吸着剤の物理的劣化を防ぐ方法として、アルギン酸ナトリウムゲルを用いた包埋加工についての応用可能性を検討した。アルギン酸ナトリウムゲルで包埋した吸着剤によるヒ素吸着実験から、包埋加工した吸着剤でもヒ素吸着能が維持されることが明らかとなった。しかし、ゲルサイズの均一性や取り扱い性に問題があることから、ゲル粒子サイズ制御のために、アルギン酸ナトリウム濃度と含有させる吸着剤の量を変化させながら最適な条件を検討している。さらにアルギン酸ナトリウム以外のゲル化剤についても検討を開始した。 (2) 前年度の結果で鉄修飾型吸着剤によりセレンの吸着が可能であることが明らかとなったことから、中国で問題となっている粗悪な石炭燃焼飛灰の土壌への投棄によるセレン溶出対策に利用できるかどうかを検討した。セレンを含有する模擬飛灰試料に鉄修飾型吸着剤を混合し、降雨暴露によるセレン溶出性を模擬カラム実験で測定した。この吸着剤のセレン吸着能は飽和容量は大きいものの吸着速度が小さいため、期待されるようなセレン溶出制御は行えなかった。しかし、模擬飛灰に含まれていたヒ素およびカドミウムについては溶出制御効果が認められた。 (3) 硫酸鉄の代わりに硫酸銅を反応させて銅修飾型吸着剤を作成し、アンモニアの吸着能を検討した。対象には屎尿に含まれるアンモニアと揮発するガス状アンモニアの両者を検討した。溶液中においては、アンモニアまたはアンモニウムイオンのいずれの形態でも吸着による濃度減少は見られなかった。一方、ガス状アンモニアでは、吸着剤共存により濃度が低下することが見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本吸着剤によるヒ素吸着の最適化(サブテーマ1)については、物理的脆弱性を補う必要性が生じたことから、ゲル包埋加工処理の検討を開始している。そのため、最適条件の確定までに時間を要している。 ヒ素吸着済み吸着剤の処理処分方法の検討(サブテーマ2)については、新型コロナウイルスの影響により、実験を担当する卒業研究生の投稿に制限が掛かったこと、表面分析等の外部機関との共同測定が行えなかったことが理由となっている。 他の汚染元素への応用および実用化の模索(サブテーマ3)については、セレンおよびアンモニアへの応用可能性の基礎データが収集できている。しかし、実用に関しては当該国の研究者との情報交換などが進展していない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ1については、ゲル包埋加工による機械的衝撃への耐久性上昇の検討が進行していることから、一定の成果が得られるものと考えている。 サブテーマ2については、吸着剤単体での再溶出試験の他に、ゲル包埋加工処理をした吸着剤からの再溶出試験を行うことで、安全性の評価につなげる予定である。 サブテーマ3については、飛灰中のセレンの溶出制御には有効ではないことが判明したが、ヒ素やカドミウムの溶出制御には利用可能であることが明らかとなっている。この点をさらに検討していくことを考えている。 銅修飾型吸着剤によるガス状アンモニアの吸着では、吸着剤の合成・保管方法について予備的な知見が得られており、この知見を基に最適な吸着条件を明らかにできるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的な蔓延の影響で、JFEテクノリサーチおよび国立環境研究所との共同測定が実施できない状況が続いたこと、実験を実施する予定の卒業研究生に登校制限が掛かったこと、これらにより学会発表の予定が立たなくなったことなどにより、次年度使用額が発生した。 これらの遅延している研究課題について、残額を公正に使用して実施する予定である。
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