研究実績の概要 |
耐熱・耐水性に優れ、CO2取込構造をもつフェノール類環状オリゴマー(Noria)であるが、Noriaは成膜性の乏しいと言う欠点を持つ。この課題を解決するた め、Noriaにアルキル鎖の導入を伴う化学修飾を施し、化学修飾Noriaによる自立膜の作成を試みた。 まず、Noriaはレゾルシノールとグルタルアルデヒドを80°C,48h反応して得た。次にイソシアン酸オクタデシル(OD)をNoriaと反応させ、オクタデシル化Noria (OD-Noria)を合成した。生成物の合成確認は、1H NMRとFT-IR、DSC、そしてGPC測定より行った。 GPC測定より、OD-Noriaの平均置換度は3.4/24(14%)、Mnは2770、分散度 (Mw/Mn)は1.19とわかった。また、DSC測定より融点(Tm)は315-336°C、融解熱量は32.9J/gとわかった。溶媒キャスト法により、OD-Noriaの自立膜作成を試みた。しかしながら膜体にはピンホールが存在し、ガス透過試験に供するには至らなかった。そこで自立膜作成を見送り、αーアルミナ管状支持体(ポアサイズ:1.0μm,外径12mm×厚さ1.8mm×長さ100mm)を用いたOD-Noria管状膜の調製を試みた。20wt%OD-Noria溶解THF溶液から得た管状膜には気体分子サイズの違いによる透過速度の変化は殆ど観測されず、クヌーセン拡散レベルでの欠陥の存在が示唆された。一方、50wt%OD-Noria溶解THF溶液から得た管状膜では分子サイズ3.5Å未満のO2まで(He,H2,CO2,O2)しか測定できず、N2とCH4の測定は困難であった。これは20wt%管状膜に比べ膜厚が大きくなったため、分子径の大きな気体の測定が困難になったと考えられる。この様に、ガス透過試験から期待する結果を得るには至らなかった。
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