研究課題/領域番号 |
19K12395
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
官 国清 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (90573618)
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研究分担者 |
吉田 曉弘 弘前大学, 地域戦略研究所, 准教授 (30514434)
阿布 里提 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70565374)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リチウムイオン分離 / 属イオンシーブ配向透過膜 / 界強化型電気活性膜分離 / 複合電気活性膜 / リチウムマンガン酸化物 |
研究実績の概要 |
本年度ではパルス電位印加でin-situのイオンインプリンティングができる導電性ポリマー重合技術を用い、リチウムイオン選択分離できる導電性ポリマー透過膜を合成し、無機系ESIX材料を複合化することでイオン輸送抵抗を低減できるデュアルイオンチャネルを有する印加電位応答型無機・有機複合電位振動イオンシーブ膜の合成を試した。また、新しい発想として、導電性ポリマーの代わりに、海藻から抽出された天然多糖類であるアルギン酸ナトリウム(Na-alg) をバインダーとして使用され、高リチウムイオン選択性を有するスケーラブルな三次元多孔質λ-MnO2/rGO/Ca-alg複合電気活性膜を得るために、二段階の製造プロセスを開発した。まずはλ-MnO2、rGOおよびNa-algからなる十分に分散した溶液を凍結乾燥して、三次元多孔質λ-MnO2/rGO/Na-alg複合膜を製造した。次に、この複合膜をCaCl2溶液に浸して、λ-MnO2/rGO/Ca-alg複合電気活性膜を得た。ここで、 λ-MnO2ナノロッドを三次元構造のrGO/Ca-alg複合体の表面と細孔に固定化し、 電位応答性リチウムイオン認識ユニットとして機能する。また、Ca-algバインダーは、水溶液中で高い安定性を備えた複合膜の形成に重要な役割を果たした。特に、この方法で大規模な複合電気活性膜も効果的に製造でき、実用的なESIXプロセスに応用できると期待される。さらに、複合電気活性膜の微細構造及び電気化学特性と膜の選択透過性の関係、イオンチャネル内でのリチウムイオンの移動機構、補助電場と膜電 位振動の相乗効果による選択的なイオンの移動及び透過性能への促進機構と電気活性イオン選択透過膜分離システムの設計原理などを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では予定の通り、パルス電位印加でin-situのイオンインプリンティングができる導電性ポリマー重合技術を用い、リチウムイオン選択分離できる導電性ポリマー透過膜を合成し、無機系ESIX材料を複合化することでイオン輸送抵抗を低減できるデュアルイオンチャネルを有する印加電位応答型無機・有機複合電位振動イオンシーブ膜の合成を試したが、予想した結果より膜の配向性は悪かったため、膜のシーブ効果などの目標に至ることができなかった。これからイオンシーブ配向透過膜の製作条件の模索が必要である。その同時に、本年度では、新しい発想として、導電性ポリマーの代わりに、海藻から抽出された天然多糖類であるアルギン酸ナトリウム(Na-alg) をバインダーとして使用され、高リチウムイオン選択性を有するスケーラブルな三次元多孔質λ-MnO2/rGO/Ca-alg複合電気活性膜を得た。この複合電気活性膜のリチウムイオン吸着容量は32.7mg g-1に達し、リチウムイオンに対して高い選択性を示した。 Li+/Na+とLi+/Mg2 +の分離係数はそれぞれ1040.57と358.96に達した。また、優れた電気化学的安定性を示し、100回の連続サイクル後でも分離効果が初期値の98.3%に保たれた。特に、この複合電気活性膜はスケールアップし易く、実用化に期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これから、導電性ポリマーと無機系ESIX材料を複合化する方法の最適化を行い、飛躍的にイオン輸送抵抗を低減したデュアルイオンチャネ ルを有する印加電位応答型無機・有機複合電位振動イオンシーブ膜を創製する。また、これまでの研究の知見から、リチウムイオンと伴う非金属イオン(例えばBr-とCl-)同時に選択的に分離できる技術の開発も重要であることが明らかにしたため、新規複合電気活性膜も合成し、リチウムイオンとBr-またはCl-同時に選択的に分離できる省エネルギーの電気活性イオン選択透過膜分離システムも構築する。さらに、電位振動イオンシーブ膜の微細構造及び電気化学特性と膜の選択透過性の関係、イオンチャネル内でのLi+の移動機構、補助電場と膜電位振動の相乗効果による選択的なイオンの移動及び透過性能への促進機構の解明などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナ影響で実験時間の減少や、旅費、人件費などの支出が少なくなるため、459,875円の次年度使用額が生じた。来年度実験用の消耗品が多く発生可能性があるため、これは部品費に使う予定である。
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