研究課題/領域番号 |
19K12397
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
蔵岡 孝治 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (80356930)
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研究分担者 |
田中 睦生 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (70344108)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CO2分離 / 膜分離 / 有機-無機ハイブリッド |
研究実績の概要 |
本研究では、省エネルギーな「膜分離法」に着目し、バイオガスからのCO2分離・除去のような過酷な環境下でも使用可能な新規ロバスト有機-無機ハイブリッドCO2促進輸送膜の創製を目指している。 本年度は、上記課題解決を目指して研究計画通り、(1)CO2親和性の高い有機高分子等の探索及び合成、(2)有機-無機ハイブリッド膜の作製とCO2透過性評価、(3)作製した膜の構造解析、(4)作製した膜の透過機構解析、(5)異なる塩基性官能基含有有機化合物の合成と膜化、(6)作製した膜のCO2吸着性及びCO2分離性能の評価に取り組んだ。 (1)、(2)では、CO2親和性の高い有機化合物としてアクリルアミド系モノマー、4級アンモニウム塩に着目し、多孔質アルミナ基材膜上に有機-無機ハイブリッド膜を作製し、作製した膜のCO2透過性を評価した。モノマーについては、ゾル-ゲル反応によるシリカ骨格の形成とモノマーの熱重合を同時に行うin-situ重合法を用いることにより、シリカとの有機-無機ハイブリッド膜の作製を試みた。本法により作製した膜は室温で窒素に対するCO2の透過率比(CO2/N2)が25.4、4級アンモニウム塩を用いて作製した膜はCO2/N2が57.9であり、どちらも高いCO2選択性を示すことがわかった。(3)では、膜の構造解析を行うためにSEMにより膜表面及び断面の観察を行った。(4)の透過機構解析のために、室温、100℃、150℃と温度を変えてCO2分離性能を評価した。(5)については、モノマーとしてメタクリルアミドなどを用いたin-situ重合法により、シリカとの有機-無機ハイブリッド膜の作製を試みた。また、(6)については、50%CO2-50%N2混合ガスを用いて、CO2分離性能を評価することにより、混合ガスでも高いCO2選択性を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、申請書に記載の研究計画通り、(1)CO2親和性の高い有機高分子等の探索及び合成、(2)有機-無機ハイブリッド膜の作製とCO2透過性評価、(3)作製した膜の構造解析、(4)作製した膜の透過機構解析、(5)異なる塩基性官能基含有有機化合物の合成と膜化、(6)作製した膜のCO2吸着性及びCO2分離性能の評価に取り組んでおり、各研究項目で成果も出ているため、おおむね順調に進展していると評価できる。各研究項目の主な成果は以下の通り; (1)、(2)では、CO2親和性の高い有機化合物としてアクリルアミド系モノマー、第4級アンモニウム塩に着目し、多孔質アルミナ基材膜上に有機-無機ハイブリッド膜を作製し、作製した膜のCO2透過性を評価した。アクリルアミド系モノマーについては、ゾル-ゲル反応によるシリカ骨格の形成とモノマーの熱重合を同時に行うin-situ重合法を用いることにより、シリカとの有機-無機ハイブリッド膜の作製を試みた。in-situ重合法により作製した膜は室温で窒素に対するCO2の透過率比(CO2/N2)が25.4、第4級アンモニウム塩を用いて作製した膜はCO2/N2が57.9であり、どちらも高いCO2選択性を示すことがわかった。(3)では、膜の構造解析を行うためにSEMにより膜表面及び断面の観察を行った。(4)の透過機構解析のために、室温、100℃、150℃と温度を変えてCO2分離性能を評価した。(5)については、モノマーとしてメタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミドを用いた熱重合を同時に行うin-situ重合法を用いることにより、シリカとの有機-無機ハイブリッド膜の作製を試みた。また、(6)については、50%CO2-50%N2混合ガスを用いて、CO2分離性能を評価することにより、混合ガスでも高いCO2選択性を示すことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、高濃度の二酸化炭素(CO2)を含有する天然ガスやバイオガスを燃料として有効利用するために省エネルギーな「膜分離法」に着目し、有機-無機ハイブリッド化手法を用いることにより、無機膜の持つ高い耐薬品性、耐熱性及びCO2透過性に加えて、高いCO2選択性を付与する。これにより、バイオガスからのCO2分離・除去のように過酷な環境下でも使用可能な新規ロバスト有機-無機ハイブリッドCO2促進輸送膜の創製を目指している。 次年度は、(3)作製した膜の構造解析、(4)作製した膜の透過機構解析、(5)異なる塩基性官能基含有有機化合物の合成と膜化、(6)作製した膜のCO2吸着性及びCO2分離性能の評価に取り組み、最終年度であるので本研究開発についてまとめる。 これまでの研究で、高いCO2選択性を示す膜が作製可能となっているので、(5)では、アクリルアミド系モノマーの官能基の塩基性を変えること、第4級アンモニウム塩のアルキル基の鎖長、カウンターイオンを変えることなどを検討し、よりCO2選択性の高い膜の作製を目指す。(3)については、作製した種々の膜の構造解析をデジタルマイクロスコープ、SEMを用いて進める。また、(6)のCO2吸着性については、昨年度、粉体試料を作製する目処は得ているため、作製した粉体試料を用いてCO2の吸着等温線の測定を目指す。CO2分離性能の評価については、CO2-N2混合ガスを用いて、昨年度に引き続いて、開発した膜について進めていく。 最終年度であるため、これまでに得られた結果を本研究の課題、課題①高いCO2選択透過性を発揮できるCO2濃度の限界を明らかにすること、課題②高いCO2選択透過性を発揮するための膜構造と気体透過機構を明らかにすること、課題③高いCO2分離性能を発揮するためのCO2固定キャリアの塩基性を明らかにすること、と照らし合わせてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大のため、予定していた研究打ち合わせ、学会出張ができなくなり、その費用を必要物品購入にあてて、研究の推進に役立てたが、わずかながら残額が生じた。この残額は、次年度の助成金とあわせて 必要物品の購入、出張旅費などとして使用する計画である。
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