研究課題/領域番号 |
19K12406
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
伊東 弘行 神奈川大学, 工学部, 准教授 (30372270)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオマス / 灰除去 / 水含侵 / 塩酸含侵 / 超音波 |
研究実績の概要 |
バイオマスブリケットの燃焼利用における重要な課題の一つに燃焼灰の排出が挙げられる。燃焼灰は燃焼器トラブルの原因になるほか処理に手間やコストを要するなど利用普及の妨げとなっている。本研究では、(1) ブリケット製造に供する粉砕したバイオマス固体試料から、燃焼灰の原因となる金属成分を効率よく除去出来る手法を調べ、(2) 金属成分を除去したバイオマス固体試料、および同試料より作成したブリケットの燃料としての特性、および燃焼特性を調べることを目的としている。 本年度は、まずバイオマス試料からの金属除去手法の効果を調べるため、試料として竹とヒノキを用い、金属除去処理を行った試料と未処理の試料で燃焼後に残る灰の重量を比較した。金属除去処理として、水に浸す(含侵)、水で洗う(洗浄)、スターラーで水流を起こしながら水含侵、超音波を付与して水含侵、塩酸水溶液に含侵、を行った。バイオマス試料の粒度の違いについても比較した。また灰中の金属成分を詳細に調べるため、試料の分析(蛍光X線分析およびICP-AES分析)を行った。 竹、ヒノキともに水含侵および水洗浄処理を行うことにより灰分を除去できるが、その効果は竹の方が大きいことがわかった。塩酸含侵によっても灰分が除去されるが、塩酸濃度5mol/L以下の範囲において、竹では塩酸濃度の影響はほとんど見られないが、ヒノキでは塩酸濃度の上昇によって灰分除去割合は大きくなった。含侵時のスターラー撹拌と超音波付与の灰分除去への効果は、ヒノキにおいてスターラー撹拌よりも超音波付与の方が大きいことがわかった。カリウム(K)は、竹、ヒノキともに水含侵により除去され、含侵時間を長くすることにより除去効果は大きくなった。鉄(Fe)では、竹において水含侵ではほとんど除去されないが、塩酸含侵により除去効果が大きくなり、金属種類によって除去効果が異なることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験器具購入、実験条件の選定および実験の実施と、ほぼ実施計画通りに実施されている。今年度の目標とした、(1) 水および塩酸含侵処理による竹とヒノキの灰分除去効果への影響、(2) 静置水での含侵、スターラー撹拌による含侵、および超音波付与による灰分除去効果への影響、(3) 灰分中の金属成分(今年度はKおよびFe)割合の比較的精度の高い分析を行い、各金属種の除去効果への影響、について実験を実施して確認することができた。また、バイオマス試料粒度の灰分除去効果への影響も、粒度変化の幅は大きくないものの確認できた。加えて塩酸含侵後の試料から塩酸を除去する目的で導入した水洗浄の灰分除去効果への影響も確認し、とくに竹において顕著であったが、灰分除去への水洗浄効果が大きいことがわかった。研究計画通り、次年度の準備として、試料含侵液体中の金属イオンを電気泳動効果にて除去する処理の効果を確認するため、高電圧電源を選定し、購入した。
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今後の研究の推進方策 |
バイオマス試料を水あるいは塩酸水溶液に含侵し、灰分除去への電場(静電場および交番電場)付与の効果を確認する。水含侵、塩酸含侵、スターラー撹拌、超音波付与、の各処理による灰分除去効果と比較する。また、灰分除去処理によるバイオマス燃料の有機成分(燃焼に寄与する揮発分および固定炭素分)の損失についても確認する。 バイオマスブリケットは運用上、貯蔵や輸送の過程である程度の強度が求められる。灰分除去を行った試料にて高密度ブリケット(1300 kg/m3程度)を作成して圧縮試験を実施し、圧縮強度への金属除去処理の影響を確認する。 KやNaなどのアルカリ金属はバイオマス試料の燃焼において、燃焼を促進する触媒として作用することが知られている。しかしながら、ブリケット燃焼における灰分の影響は詳細には明らかになっていないのが現状である。今後は灰分除去を行った試料にて高密度ブリケットを作成して、単一ブリケットの高温空気中における燃焼試験を実施し、着火遅れ時間、燃焼速度(質量減少速度)の時間変化、ブリケットの揮発分が火炎をともなって燃焼する有炎燃焼継続時間、揮発分が放出された後に残された固定炭素分が試料表面で酸素と反応して燃焼するチャー燃焼継続時間、に対する金属除去の影響を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、申請時には今年度に電場付与装置の資材購入を考えていたが、同装置製作にあたっては試作を行いながら進める方が種々の課題に対するフィードバックを盛り込んだより良いものが出来ると判断したためである。 使用計画としては、まず電場付与の効果を確認する装置を製作する。直流および交番電場を印加する高電圧電源については今年度購入済みであるため、試料を含侵する容器の購入および電場印加電極材料を購入し、製作を行う。 消耗品として、バイオマス試料、蒸留水、塩酸、TG/DSC分析用のアルミナカップ等を購入する。
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