研究課題/領域番号 |
19K12407
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
川田 邦明 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 教授 (50367413)
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研究分担者 |
大野 正貴 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 博士研究員 (40781216)
小瀬 知洋 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 准教授 (60379823)
浅田 隆志 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (60434453)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リン資源 / 炭素化物 / バイオマス / 資源循環 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、もみ殻およびカキ殻を原料としたバイオマス由来のSi-Ca複合化炭素化物を利用した水中のリン回収に最適なSi-Ca化学形態の複合化手法を開発すると同時に、リン回収後の炭素化物からのリン脱離に及ぼす環境因子の影響を評価し、Si-Ca複合化炭素化物を利用した水田におけるリン循環の実証から新規のマテリアルフローを構築することで、リン資源節約に向けたリン循環システムの開発を目指している。本研究の計画として、炭素化物上におけるSi-Ca複合化手法の開発、リン回収済み炭素化物におけるリン脱離性の評価、Si-Ca複合化炭素化物を利用したリン循環システムの実証およびマテリアルフローの構築の3項目を設定し、実施している。2019年度は、リン吸着能の向上に向けてCa担持炭素化物の作製条件が炭素化物の特性やそのリン吸着能に及ぼす影響について評価し、カルシウム原料として水酸化カルシウムを用い、炭素化前に高温高圧処理を行うことで、リン吸着能を約2.6倍に増加できた。また、炭素化物表面のSEM観察から炭素化前処理により表面のCa結晶構造が変化していることが確認され、X線回折の分析から2種のケイ酸カルシウムが形成されていることを確認し、炭素化前処理によるこれらの形態の形成がリン吸着能の向上に起因したことが明らかとなった。さらに、国内学会として第54回日本水環境学会年会においてこれらの成果を発表した。また、国際会議としてThe Water and Environment Technology Conference 2020において発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、もみ殻およびカキ殻を原料としたバイオマス由来のケイ素-カルシウム複合化炭素化物を利用した水中のリン回収に最適なSi-Ca化学形態の複合化手法を開発すると同時に、リン回収後の炭素化物からのリン脱離に及ぼす環境因子の影響を評価し、Si-Ca複合化炭素化物を利用した水田におけるリン循環の実証から新規のマテリアルフローを構築することで、リン資源節約に向けたリン循環システムの開発を目指している。本研究の計画として、炭素化物上におけるSi-Ca複合化手法の開発、リン回収済み炭素化物におけるリン脱離性の評価、Si-Ca複合化炭素化物を利用したリン循環システムの実証およびマテリアルフローの構築の3項目を設定し、実施している。2019年度は、Si-Ca複合化手法の開発について、当初の研究計画を概ね達成した。ここでは、リン吸着能の向上に向けてCa担持炭素化物の作製条件として添加するCa原料の化学形態、Caの添加量、炭素化前における高温高圧処理の有無、および炭素化温度が炭素化物の特性やそのリン吸着能に及ぼす影響について評価しつつ、リン吸着に最適な作製方法を検討した。原料として添加するCa化学形態は、作製した炭素化物のリン吸着能に影響することが明らかとなり、Ca(OH)2がCaCO3やCaOよりもCa源として有効であった。また、炭素化前における高温高圧処理を行うことで、リン吸着能が約2.6倍に増加することが確認され、炭素化前処理が炭素化物表面上のCa化学形態を変化させることが示唆された。ここで、炭素化物表面のSEM観察を行ったところ、炭素化前処理を行うことで表面のCa結晶構造が変化していることが確認され、X線回折の分析からはCaSiO3およびCa2SiO4が形成されていることを確認した。炭素化前処理によるこれらのCa化学形態の形成はリン吸着能の向上に起因したことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の計画として、2019年度に引き続きSi-Ca複合化炭素化物の開発において、Si-Ca形態を変化させる要因として炭素化前処理時の温度、処理時間、および圧力について検討する。これに加えて、リン回収済み炭素化物から代替肥料としての再利用を想定したリンの脱離に及ぼす環境因子の影響を評価する。具体的には、ここまでで開発したリン回収に最適なSi-Ca形態を持つ炭素化物を用いて飽和吸着量を明らかにし、炭素化物上に存在するリンに対して環境因子としてpH、酸化還元電位、温度等の変化に伴う炭素化物上からのリンの溶出脱離のしやすさをリン酸イオンとして定量することで評価する。環境因子の条件設定としては、本研究の目指すところである水稲栽培への適用を考慮し、水田土壌の耕耘の深さである表層~30 cmの範囲の環境条件を文献値および実測値をもとに設定する。これにより、水稲栽培時の肥料施肥量の節減可能量および代替肥料の散布方法を決定する。さらに、上記までの結果に基づいて、実際の水田の一部を対象として借用し、開発したSi-Ca複合化炭素化物により水田から排水路への排水中のリンをどの程度回収できるかを排水中のリン濃度の測定により定量的に評価し、リン回収した炭素化物を水田土壌に散布し、代替肥料としての適用性を実証する。これにより、実証水田におけるシステム全体のリン物質収支モデルを構築することで、リン循環におけるマテリアルフローを新たに構築し、本リン循環システムの社会的効果の解釈、評価する。
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