海洋中のマイクロプラスチックは世界的な問題である。その問題の解決方法の1つが生分解性プラスチックである。そこで、サケ白子由来二重らせんDNAに注目し、生分解性を有するDNAプラスチックの創製を試みた。 昨年までに、ホルムアルデヒド(HCHO)で架橋したDNAプラスチックがポリエチレンとほぼ同等の強度を有し、DNA分解酵素存在下で、生分解性を示すことが示された。そこで、2021年度はDNAプラスチックの構造をより詳しく解析することと、酵母由来RNAを用いたRNAプラスチックの作製を試みた。 DNAプラスチックの形成メカニズムを考察するために、DNAの二重らせん含有量をSybr Green Iを用いて求めた。その結果、含有量は78.6%であり、二重らせんの一部が崩壊しており、核酸塩基のアミノ基部位が架橋に関わっていることが示された。更に、DNAプラスチックの架橋密度と架橋点間距離を引張強度から求めたところ、それぞれ、5950 mol m-3、6.54 x 10-10 mであった。この値は、HCHO濃度によって大きく変わるものの、相対的に小さく、DNAプラスチックの形成にはメチレン架橋だけでなく、水素結合等が大きく関与していることが示された。そこで、RNAからなるRNAプラスチックの創製も試みた。RNAは一本鎖のみから形成され、一部の核酸塩基が液相側を向いている。そのため効率的に架橋を形成することが期待される。RNAプラスチックもDNAプラスチックと同様、HCHOを架橋剤として用いた。得られたRNA架橋体はIR測定からメチレン架橋を示した。しかし、RNAプラスチックは生分解性を示すものの、水安定性および力学的強度は低かった。 以上のことから、核酸プラスチックの安定性には核酸の分子量が大きく関係していることが示され、分子量の高いDNAの方が優れていることが示唆された。
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