研究課題/領域番号 |
19K12415
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 志保 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (60432340)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 貧酸素化 / 集中豪雨 / グリーン関数 / 流動シミュレーションモデル / 沿岸海域 |
研究実績の概要 |
近年増加する集中豪雨が沿岸環境に及ぼす影響を評価するには,豪雨による海域の流動構造の変化を把握する必要があり,そのためには豪雨時に海域に流入する淡水量の推定が必要である。リアルタイムの河川流量データが公表されている場合は少ないため,陸水・水文学の分野で開発されてきた流域水収支モデルが海域への淡水流入量を推定するために有用なツールとなるが,このモデルを用いるには浸透係数等,数多くのパラメータが必要であった.そこで本研究では海岸沿いの塩分とGreen関数を用いて流域水収支モデルのパラメータを逆推定する方法を開発する.これにより任意の海域において,集中豪雨時の淡水流入量を迅速に評価できるようにする.また,淡水流入が貧酸素化に及ぼす影響を生物化学過程と物理過程に分け,後者に着目することにより,集中豪雨が海域の貧酸素化に及ぼす影響の定量評価を行うことを目的としている. 令和2年度に予定していた現地でのデータ収集は,新型コロナ感染拡大の影響により出張ができなかったため実施できなかった.令和3年度にはこれらのデータの取得を目指す. 一方令和2年度には,過去50年間にわたる対象海域の水温,塩分,過去10年間の溶存酸素濃度および過去90年間における対象海域周辺の気象データを用い,降水量の変動傾向,成層構造の変動傾向および貧酸素化の要因を解析した.また有限体積法による三次元沿岸海洋モデル(FVCOM; Chen et al., 2003, J. Atmos. Ocean Technol.)から得られた1か月分の計算結果と現地観測結果および Green関数とを用いて,流域水収支モデルのパラメータの最適化を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度には,新型コロナ感染拡大の影響により現地に移動できず,十分な現地観測データを集めることができなかった.一方,集中豪雨が沿岸海域の流動構造および成層構造におよぼす影響を解析するための三次元沿岸海洋モデルの調整を進めることはできており,上記のデータを令和3年度に得ることができれば,目標とする集中豪雨の貧酸素化の変動への影響評価が可能になると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に実施できなかった集中豪雨時における塩分データを得るための現地観測を令和3年度に計画している.また社会情勢等によりそれらの実施も困難になった場合には,様々な沿岸海域の岸付近における塩分データおよび底層溶存酸素濃度を収集することにより研究計画を補う。 令和2年度に1か月分の計算結果と現地観測結果および Green関数とを用いて行なった流域水収支モデルのパラメータの最適化を、令和3年度には複数年度の計算結果および現地観測結果を用いて行う. これにより河川流量データが公表されていない場合においても,海域に流入する淡水量を見積もることができるようにする.また,モデル結果を用いて,集中豪雨が海域の貧酸素化に及ぼす影響のうち物理過程について定量評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額については,令和2年度に新型コロナウイルス感染症の影響で現地観測ができず使用しなかった旅費,傭船費,調査機材,分析費等に用いる. また,研究成果の発表のためオンライン学会参加費,英語論文校閲費などに用いる.
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