研究課題/領域番号 |
19K12416
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
乾 隆帝 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (20723844)
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研究分担者 |
赤松 良久 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (30448584)
栗田 喜久 九州大学, 農学研究院, 助教 (40725058)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環境DNA / 河川水温 / 冷水性魚類 / GIS / 分布予測 |
研究実績の概要 |
【野外調査】2019年9月に,江の川水系に新規で30地点,太田川水系に新規で24地点,水温ロガーを設置した.水温ロガーを既に設置している調査定点を含め,江の川水系の調査定点は計47地点,太田川水系の調査定点は計32地点になった. 【環境DNA分析】2019年度は,冷水性魚類を対象に分析をおこなった.イワナ類およびサクラマス類(サクラマスおよびサツキマス)のプライマーおよびプローブを作成し,2017年の夏季に既に採集していた佐波川水系の24地点および小瀬川水系の19地点を対象に,在来種であるサクラマス類(アマゴ:サツキマス陸封型)の分析をおこなった. 【得られた結果】佐波川水系においては,アマゴのDNAが1ウェル以上検出したのが10地点,2ウェル以上検出したのが9地点,3ウェル以上検出したのが9地点,4ウェルすべて検出したのが6地点だった.小瀬川水系においては,1ウェル以上検出したのが10地点,2ウェル以上検出したのが8地点,3ウェル以上検出したのが5地点,4ウェルすべて検出したのが4地点だった.環境DNA分析によって得られた分布情報と,水温データを用いて,分布予測モデル(Maxent)を構築した結果,アマゴの分布には夏季日中平均水温が最も影響を与えることが明らかになり,また現状の水温条件での佐波川水系および小瀬川水系における潜在的生息地は157.7kmで全流程の40%,小瀬川の潜在的生息地は146.4kmで全流程の49%と算出された.さらに,夏季日中平均水温が1℃,2℃,3℃上昇時,1℃,2℃,3℃低下時の6シナリオにおいて,アマゴの分布域変化を予測した結果,佐波川,小瀬川ともに1℃上昇で生息地が50%前後に,2℃上昇で生息地が20%前後に,そして3℃上昇で10%以下になることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度は,河川水温が上昇することによって分布域が拡大することが予想される種と,分布域が縮小することが予想される種のプライマーを構築すること,江の川水系および太田川水系における調査定点に水温ロガーを設置することが主な研究の予定であったが,既に水サンプルおよび水温データを取得済みであった佐波川水系と小瀬川水系において,アマゴを対象とした環境DNA分析を行うことができ,さらにアマゴの分布に夏季水温が影響を与えることが明らかになった点で,当初の計画以上の成果が得られたといえる.2020年度は,2019年度に得られた知見を発展させ,江の川水系および太田川水系における採水および水温データの取得を完了し,各種の環境DNA分析をおこなっていきたい.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に水温計を設置した江の川水系の調査定点および太田川水系の調査定点において,夏季および冬季に採水および水温データの取得をおこない,各種魚類を対象とした環境DNA分析を随時おこなっていく.さらに,電気ショッカーでの魚類の採集状況と,3種の粒子保持径のフィルターによって濾過したサンプルの環境DNA分析結果を比較することにより,分布・生物量予測モデルに適切なフィルターの粒子保持径を明らかにする予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の機材が,新型コロナウイルスの影響により年度内納品が難しい状況になったため,次年度に繰越し,次年度予算と合算して購入することとした.
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