研究課題/領域番号 |
19K12417
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
木下 泉 高知大学, その他部局等(名誉教授), 名誉教授 (60225000)
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研究分担者 |
速水 祐一 佐賀大学, 農学部, 准教授 (00335887)
田原 大輔 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (20295538)
太田 太郎 公立鳥取環境大学, 人間形成教育センター, 准教授 (30504500)
川村 嘉応 佐賀大学, 農学部, 特任教授 (30601603)
斉藤 知己 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (80632603)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 有明海 / ノリひび網 / 魚類成育場 / 河口域 / 流れ |
研究実績の概要 |
以下の海洋観測と生物調査は,ノリ養殖の閑散期6月と繁忙期12月の2回行った.項目によっては,2019, 2020年度の調査結果を用いた. 【潮流】ノリ漁期と非ノリ漁期の潮流の様式を比較した.ノリ漁期の潮流は,ノリひび網のない水域よりも多い水域の方が,比較的強まっていた.同潮時の流速は,ノリ漁期よりも非ノリ漁期の方が早くなる傾向にあった.これは,ノリひび網群の抵抗よりも,むしろ非ノリ漁期での潮位差がより大きかったことに起因していた. 【プランクトン】2021年2月に採集した動物プランクトンを同定・計数した.プランクトンの分布密度は湾沖合域で高く,各河口域に向かって低下し,河川感潮域内でも上流に向かって低下した.プランクトンの主体はカイアシ類で,その他の多毛類,尾虫類,二枚貝類,矢虫類などの分類群を含む多様性は沖合で高く,各河口域に向かって低化した.さらに,河川感潮域内ではアミ類が出現し,最優占群となる地点もあった. 【甲殻類】エビ類について,テナガエビ科3種(シラタエビ・テナガエビ・ユビナガスジエビ)とそれらの幼生の分布と流れとの関係を調査し,現在,精査中である. 【魚類】特産種エツについて,2019年7月に諫早湾潮受堤防内調整池での仔魚と堤防前面海域での仔魚の耳石ストロンチウム/カルシウムの線分析を行った.調整池内での個体は,孵化から淡水域に生息していた履歴を示した.逆に,堤防外では,採集直前まで淡水域に生息していた履歴を示したことから,調整池内より放出された個体の可能性が高く,湾奥の河川から輸送ではないことが示唆された.調整輪池の存在が,遡河回遊魚とされてきたエツの生活史を奇異にしている可能性が示唆された.ヤマノカミ仔稚魚の耳石には,ふ化30日前後に出現する着底を示す確認輪が観察されたことから,本種仔魚が浮遊期から底生期に移行するのは,ふ化後約1ヶ月であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度の調査は,2021年 6, 12月に行われたが,当初の計画の半分に過ぎなかった.これは,言うまでもなく,全国的に蔓延したCOVID19オミクロン株の影響であり,調査できた月においても,スタッフが揃わず,調査内容を縮小せざるを得なかった.従って,調査に参加できなかった分担者は,実験試料を満足に得られなかったので,室内作業を進めることができなかった.しかしながら,本研究の主題である「ノリひび網群による魚類プランクトンの反時計廻りの輸送への影響」に関しては,ノリ養殖閑散期(2021年6月) 下でのコイチ(ニベ科準特産種)とノリ養殖繁忙期 (2021年12月) 下でのコウライアカシタビラメ(ウシノシタ科準特産種) の水平密度分布を再試でき,さらに同様の概念の調査を動物プランクトンおよびエビ類幼生においても調査できた. 本研究の総決算と位置付けているシンポジウムは,上記と同じ理由で開催を断念せざるを得なかった.
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今後の研究の推進方策 |
室内実験としては,「ノリひび網群による魚類プランクトンの反時計廻りの輸送への影響」をみるために,耳石を用いて仔魚の回遊履歴を重点的に解析し,魚類以外では十殻類エビ類の分布密度および湾外性動物プランクトンの水平分布を明らかにしたい. 当初の計画では,本課題の最終年度に当たる2021年の秋頃に,シンポジウムを開催する予定であったが,今般のCOVID-19禍では,通常のシンポジウムは断念せざるを得なかった.しかし,シンポジウム開催は本研究の総決算であり,2022年秋季に,「有明海の生物およびそれをとりまく環境の現況‐潮受け堤防および大堰の施工前と比較して」(仮題)を,佐賀市水産会館で主催する予定であり,現在,その準備中である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の最終年度に当たる2021年度の計画では,本研究の総決算である公開シンポジウムを開催する予定であったが,今般のCOVID-19禍では断念せざるを得なかった.従って,社会への還元としてシンポジウムは2022年度に延期して開催したい.すなわち,秋季頃に,シンポジウム「有明海の生物およびそれをとりまく環境の現況‐潮受け堤防および大堰の施工前と比較して」(仮題)を,佐賀市水産会館で主催する予定である.その際,約20万円の予算は,招待講演者の旅費および会場費に充てる所存である.
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