研究実績の概要 |
1)群落再生:ボッグ種の導入を実験する4つの重点区域では,2021年までに遮水後,ECとpH は,それぞれ外れ値はあるが120μs/cm-1以下,5以下であり,ボッグ種に好適な値を保っていた.また地下水面の変動幅もおおむね20 ㎝以内であり,遮水壁は一定効果があった.再生地全体の群落のうちオオイヌノハナヒゲ群落がボッグに最も近い群落であったが,2016年から2022年の群落の変化は,ボッグに向かっていなかった.水位・水質と群落分布との関係を解析した結果,pHと4つのミネラル(Ca, Na, Mg, Cl)が群落分布と有意な関係を示した. 2)温室効果気体の動態と水環境評価:5-10月に、約3週間から1ヶ月の間隔で温室効果気体フラックスのフィールド観測を行った。昼夜を通して観測して,1日当たりの環境の変化による温室効果気体の動態を明らかにした。それにより、湿生植物を導入し、再生が進められている重点区域は、手の加えられていない測点に比べて温暖化への寄与が小さいことが示唆された。また地下水の化学成分も分析し、水環境の違いによって湿原再生地が放棄泥炭地よりもどのくらい温暖化を緩和させられるのかを評価した。 3)環境・群落の時空間モニタリング: 湿原再生地で得られた空撮画像の個体レベルでの植物種の同定を目的として、機械学習による複数の自動分類モデルを作成した。現地調査で得た検証データとの比較により精度検証を行った。学習モデルにランダムフォレスト、オルソ画像上でのセグメンテーションごとのRGBの各平均値と草丈を用いたモデルの全体精度が最も高く、約80%を示した。この過程で風により植物が揺れ画像が不鮮明になる地点では誤分類が生じやすくなること、および高度15mの低空空撮で8月に取得した画像を用いた場合に分類精度が向上することがわかった。
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