温暖化の進展が地球上で最も顕著に現れる極域の植物寄生菌の分類的位置や生態を明らかにし、保護や保蔵の必要性の根拠を示すことは重要である。本研究では、極域で野生植物に寄生する糸状菌について、多様性、生態および資源価値を温帯産の植物病原菌と比較しながら調べた。その結果、北極域のコケや維管束植物に寄生する糸状菌の多様性や近年の変動が明らかになった。また温帯域でコムギなどに雪腐病を起こす糸状菌に近縁の未知の糸状菌種が分布していることがわかった。これら北極域由来の糸状菌のいずれもが0℃下で安定した菌糸伸長を示すなど、低温生育性の微生物資源として将来的な保護や保蔵の必要性が高い性質を有していた。
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