研究課題/領域番号 |
19K12423
|
研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
岡 浩平 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (80573253)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 河口生態系 / レジリエンス / 底生生物 / 海浜植物 / 大規模攪乱 |
研究実績の概要 |
R2年度は、河口生態系のレジリエンスを評価するために、R1年度に実施した生態系の基盤となる地形や植生などのモニタリングに加えて、生物種の分布データの取得を重点的に行った。 広島県松永湾に注ぐ本郷川を主な対象地として、魚類(トビハゼ)、貝類(ヘナタリ・フトヘナタリ)、カニ類(ハクセンシオマネキ)の詳細な分布調査を行った。トビハゼについては、繁殖期前後の個体の分布、越冬期の巣穴の分布も調査し、生活史に応じた分布情報の取得を行った。取得した生物の分布データをもとに、生息適地を抽出し、種間の相違性や類似性などの解析を行った。その結果、ハクセンシオマネキは様々な環境に横断的に分布したのに対して、ヘナタリは局所的に分布するなど、種によって攪乱や環境要因への応答が異なることが示唆された。 また、河口生態系のレジリエンスの評価種の検討を深めるために、底生生物に着目し、広島県内の底生生物の定量調査を実施した。その結果、河口干潟の土壌や微地形ごとの底生生物の優占種や指標種を抽出することができ、微細な環境に応じた評価種の選定が重要になることがわかった。 河口域の大規模攪乱の先行事例として、東日本大震災の攪乱を受けた井土浦では、主に海岸堤防に覆砂したエリアを中心に調査を行い、人工構造物およびその緩和策による植生への影響を評価した。その結果、海岸堤防に覆砂することによって、海浜植物など自然植生に近い植生への回復が期待できたことから、河口域のレジリエンスを維持する方策の一つになりうると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響によって、遠方での調査の一部で中止や延期が発生したが、近場の調査地で重点的な調査を実施することで、R2年度に予定していたとおり、河口生態系の生物種の分布や種組成に関するデータを取得することができた。また、取得したデータをもとに、生息適地の評価など解析も十分に進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
R2年度と同様に、R3年度も新型コロナウイルスの影響が続くことから、遠方の調査の回数を減らし、近場の調査頻度を当初よりも増やして、重点的な調査・解析を行う。また、R3年度は最終年度になることから、大規模攪乱に対して、(1)河口砂州の植生の変動、(2)河口干潟の植生および底生生物の変動、(3)津波被災地の植生の回復の3点について、調査を継続するとともに、解析を進めて、原著論文として投稿する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
R2年度は、コロナウイルスの影響により、遠方の調査の中止や大会などがオンラインになったため、旅費の支出が予定よりも大幅に少なくなった。R3年度は、近場の調査地への旅費を増やすこと、土壌分析やGIS解析を進めるための人件費、論文に関係する英文校閲や投稿費用などへの支出を予定している。
|