本来は2021年度が研究の最終年度であったが、コロナウイルス蔓延により出張が困難になり、1年延期して2022年度が研究の最終年度になった。 2022年度は、松永湾の河口干潟を対象に、塩生植物やトビハゼなどの底生生物の継続調査を行った。これらの継続調査により、河川の出水に伴う動植物の動態を把握することができた。また、水中ドローンを活用し、アマモ場の分布調査を実施し、アマモとコアマモの瀬戸内海沿岸における生育適地を抽出することができた。さらに、津波被災地である仙台湾岸の名取川の河口干潟を対象にして、津波による攪乱後に再生した塩性湿地の植生と微地形について調査した。海岸林跡の後背湿地の植生の継続調査も実施した。これらの調査により、津波という大規模攪乱から11年が経過した植生の回復状況を捉えることができた。 研究期間全体を通して、河口の生態系を中心に、それらに隣接する後背湿地やアマモ場、砂浜・砂丘といった様々な生態系を対象に、攪乱に対する動植物の動態を捉えることができた。また、植生や底生生物(貝類、魚類など)といった様々な分類群を対象に、津波や河川の出水などの自然攪乱、それに加えて復興工事という人為攪乱の両方に着目し、これらに対する動植物の動態を捉えることができた。これらの一連の研究を通して、動植物は自然攪乱に対してはある程度のレジリエンスが備わっているのに対して、人為攪乱に対しては極めて脆弱な面があることが示唆された。
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