研究課題/領域番号 |
19K12424
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
スティアマルガ デフィン 和歌山工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (50625259)
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研究分担者 |
佐々木 猛智 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (70313195)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 博物館標本 / ビッグデータ / ミトコンドリアゲノム / フィールドワーク / 貝殻標本 / DNAバーコーディング / 次世代シーケンサー |
研究実績の概要 |
本研究では、次世代シーケンサーで多数の腹足類の博物館標本からミトコンドリアゲノム全長配列(ミトゲノム)及び18S-rRNA・28srDNA全長配列の決定に加え、それらから有用な部分遺伝子の断片配列マーカーの開発をする。得られたマーカーを更に軟体部や貝殻の博物館収蔵標本のDNA実験に活用をする。最大目標としては、大量なDNA情報や化石・地質学的情報を含むビッグデータセットで腹足類の大系統の解析を行い、腹足類の多様性変動のパターンと地史に起きた環境変動との関連を解明する。 1~2年目の目標には:(1) 博物館標本やフィールドワークからのサンプル採取;(2)一部のサンプルの次世代シーケンサーによるミトゲノム全長配列決定である。目標(1)については、東京大学博物館からのサンプル採取や、インドネシアや日本でのフィールドワークで、ほぼ達成できたと言える。目標(2)については、プロトコルの再確認実験がうまく行ったものの、新型コロナウイルスの影響で実際に決定したサンプル数はまだ1サンプルのみである。従ってこれについては、ある程度は達成できたと判断している。しかしその代り、2年目から開始する予定の実験(貝殻や軟体部からのDNAの断片配列の獲得)が、1年目から開始できた。従って総合的に判断する時に、予定通りと判断できると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1~2年目の目標についてのそれぞれの進捗報告を下記に報告する。 (1)博物館標本からのサンプル採取や、フィールドからのサンプル採取については、ある程度進んでおり、サンプルを確保ができている。現在、東大博物館が収蔵しているベトナムからのサンプル約50種、東大博物館が収蔵している標本約50種、そして和歌山高専が採取して東大博物館に収蔵したサンプル約50種の肉片を入手することができたほか、インドネシアや日本で行ったフィールドワークからもサンプル入手ができた。← 達成できた。 (2)100~200種程度の腹足類のミトゲノム及び18S・28Sを、次世代シーケンサーでの決定については、試しに一種の配列決定を行った。その成果を今、まとめている。一種よりも多く決定する予定だったが、新型コロナウイルスの影響への対応に、研究が進まないのが現状で、現段階、一種のみ決定した。← 一部達成できた。
しかしながら、2年目に予定していた:(1) 博物館標本の軟体部からの断片配列情報の獲得情報については、1年目から作業開始しており、現在、約2000個ほどの新規配列情報を獲得した。これらの成果を今、論文にまとめている段階である。(2) 貝殻からの断片配列情報の獲得に必要な貝殻からのDNA配列抽出・配列決定実験のプロトコルの条件検討実験を行った。その一部の結果を論文にまとめているところである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の実施には新型コロナウイルスの影響が非常に大きい。様子を見ながら実施を続けていく必要がある。それに踏まえて、今後の研究には、次のようなものを行う予定である: (1) 次世代シーケンサーによる解析を行う。必要に応じて、外注による解析も考えられる;(2) 試薬については、入手できる時にできるだけ早く入手する;(3) 手元にあるデータを早めに解析して論文化する;(4)必要に応じて、研究補助員や学生アルバイトなども雇い、研究を進めていくなどの対策を、取っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
最も費用がかかる次世代シーケンサーによる解析が、新型コロナウイルスの影響でまだ実施できていない。今後は様子を見て、今年度には是非ともサンプルの一部のミトゲノム全長配列の決定を行いたい。次世代シーケンサーによる解析から得られるビッグデータはまだないため、解析用パソコンの購入を見送りとなった。しかし大量に獲得した断片配列を処理するためのパソコンやその周辺機器を本年度に入手する予定。消耗品や外注解析については、併用できる別のプロジェクトの残りのものを使用したため、本科研費からの出費が少なくなった。終盤においては、国際便が止まったなど新型コロナウイルスの影響で年度内に一部の試薬の入手ができなかった。本年度から、消耗品は本科研費のみで入手する予定。 1年目にサンプルやデータ採取に専念したため、論文出版にはまだ至っていなかった。取れたデータから順次解析をし、発表していく予定であるため、2年目から、2~3報ほどの論文の出版費用がかかると想定している。学会発表や研究集会、出張が伴う研究打ち合わせには、先方の一部負担や複数の業務一緒に行うことや、新型コロナウイルスの影響で、参加を予定していた様々な学会が止められたため、国内外の出張がさらに少なくなった。今年度については、様子を見る必要はあるが、研究活動に必要な出張に必要な費用を計上した。
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