本研究は、森林‐草原モザイク景観を対象に、森林生態系における草本植物および草原生態系における木本植物が担う生物多様性や生態系機能を明らかにすることを目的としている。1~3年目にかけて、森林生態系における草本植物の生物多様性保全および草原生態系において木本植物が担う生態系機能にかかるデータを野外調査により収集した。今年度は、これらのデータを解析して取りまとめ、森林-草原モザイク景観における低管理コストかつ多面的機能の向上に資する生態系管理手法を検討した。 森林生態系における草原性植物の生物多様性として、草原利用履歴をもつ人工林を対象に地上部植生調査および埋土種子調査をおこなった。結果、草原利用履歴をもつ人工林において地上部植生には存在しない草原性植物の埋土種子が存在することを明らかにし、多面的機能の向上に資する森林管理として土地利用履歴を考慮することの重要性を示した。 また、草原生態系における木本植物が担う生態系機能として、全国7カ所の火入れ草原を対象に木本を寄主とする虫えいの調査をおこなった。結果、15種類の虫えいが確認され、半自然草原に生育する木本植物が昆虫のハビタットとして機能していることを示した。 これらの成果をそれぞれ国際学術誌において公表し、森林―草原モザイク景観において草本および木本植物の柔軟な管理をすすめることにより、低管理コストかつ多面的機能の向上につながる可能性について議論した。
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